Dura.E.Moon
- 2026/03/09 20:56:52
「アレックス!アレックス!どこ?どこなの?」
「はい、お嬢様お呼びで‥」
「あの音を何とかして頂戴!、夜な夜な気持ち悪いったらありゃしない!もう耐えられないわッ。」
深夜、石造りの城に冷たく弱々しく響き渡る音?にグレイスは【たまらない】と言わんばかりの剣幕でまくし立てた。
「申し訳ございません。ご主人様より、週末は何があっても地下室のドアを開けぬようにと、申し使っております故‥」
「あなた、何とも思わないの?アレは普通の音じゃないわッ、不気味なうめき声、あれは人間?」
「それは私めからは何とも‥すべてご主人様の命により”関わるな”と‥。」
「もういいッ!!」
こうなったら、何が何でも突き止めてやるわ!怖いけど、このままこのお城で住むわけにいかないじゃない!
私だって旧貴族の娘よ、多少の剣の心得はある、いざとなったら‥。
じつは私はこの城のすべての扉を開けることの出来る唯一の【鍵】の在りかを知っている。
お父様が地下室から戻られた時、書斎の隠された引き出しにしまい込むところを偶然みたのだ。
‥その夜‥(チャリ‥)「あった、これがあれば開くわ。」
右手には壁に掛けられていた剣を、左手には灯した燭台を持ち、手首には【鍵】を吊り下げ、しずしずと
螺旋階段を下りて行った。前方2mほどの視界しか照らされない漆黒の底に向かって、彼女はゆっくりと歩を進める。
音?(声?)はさっきより静かになってはいたが耳を澄ませばやはり聞こえていた。
普段ここまで来たことは無い。もともと強気でお転婆な性格だった彼女でさえ、幼少の頃より地下に入ってはならぬ、
という父親からの固い教えが祝詞のように刷り込まれていたので、さいごの扉を見たのはまさに今が初めてだった。
「ここね‥。」
確かに微かに、例の音とも声ともつかない不気味なうねりはその奥から発せられていた。鉄の鋲がいくつも施された
硬い重い扉の鍵穴にゆっくりと【鍵】を差し込むと右に回した。
‥ガチャン‥ ギ・ギ・ギギィィィ~‥
彼女は重みで軋むその塊を力を込めて押し動かした。すると漆黒の小部屋が現れた。‥その中央‥、‥何かがある。
手にした燭台をかざして見ると、四角く区切られた等身大の枠の様な物があった。‥どうも?察するにその四角い枠は、
ドアの淵と思われた。そして、そのドアは向こう側に開かれている‥。‥が、その中はまたしても漆黒だ。
まるで墨をおとしたように、全て飲み込まれるような本当の黒‥「闇」だった。
「グレイスッ!!」
彼女は自分の心臓から手が飛び出る思いがした。幼い頃から叱責され続けてきた記憶にある中で、
最も厳しい『お叱り』だった。
「‥‥お父様‥。」
「ここで何をしている。ここには入ってはならぬと言っておいたはずだが?」
「‥すみません、ですが!お父様!これは?」
「ああ、もういい、そこを閉めてこちらに来なさい。書斎で話そう。」
「‥‥。」
回廊を先行し登って行く父の背中をながめ、グレイスは黙ったまま父の書斎に入った。
「掛けなさい。」
「お父様、あれは?」
「‥グレイス‥お前にもそろそろ話しておかねばならんと思っていたのだ。
我がハワード家(Howard)では、代々伝わるある秘術がある。それは未来予知を可能にするというものだ。
私達が多く財を投機に託しているのは知ってるな?そこでの成功を可能にしているのは、この秘術なのだ。
この秘術が何代前からのものか?定かではない。
伝えによると、祖先のもとにある夜、魔人が訪れたというのだ。そして魔人は当時の当主を気に入り
ある物を残していった。それがあの『扉』だ。あれは今、黄泉の国と通じている。そこから聞こえて来るのは
人ならざる者の声だ。彼らの中には時間を超えて見通す能力を持った魔物も居る。
我々は、時々彼らに未来を尋ねることで、その答えを聞き実際の投機に役立てているのだ。」
「う‥うそ。そんな、バカなお話しって!」
「これは本当の事だ。彼らのおかげで我が一族は他家に比べてたいそう繁栄しておる。
当主はあの『扉』を、自らの意思で黄泉の世界に通じさせてしまった。本来すべてに通ずるべき『扉』をな。
そうして彼は奥に足を踏み入れたきり帰って来ない。‥それ以来誰も閉じることが出来んのだ‥。
今の我々は、あの声を利用し財を築く事に成功している。せめてもの対価だろう?
あの『扉』を持ち込んだ魔人は自らを【Dura.E.Moon】と名乗っていた。
そして、あの『扉』のことは【Anywhere Door】と呼んでいたそうだ。」






















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