Nicotto Town


ストーリーテーラーの集まる小さなカフェ

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出逢い

投稿者:Litsu☆

そこは昔のある国のとある下町。

家が貧しかったので、三姉妹全員の面倒を見るのはとても無理だって、私にも分かってた。
だから一番末の私が出ていくことにしたんだ。姉貴らに気を遣ったとか、自己犠牲とか、
そういうんじゃ無くて、ほんとに自分で決めて出てったのさ。そういうもんだろう…ってね。

生まれた時から居たこの町は、ボロっちいダウンタウンだったけど、なんとか食べていけたよ。
こんな町だからね?、特段私が目立つってわけでもなかったし、ほかに行くとこも無かったし。
この町、露店が多いんだよ。だからお店のおやじが見てない隙に、パパッってねw
…そりゃ、生きてくために手癖も悪くなるさァ、そういうの上手かったんだ、アタシ♪
だからホント食べ物には困らなかったよ。
まあでも、家から出ちゃった後、寝るとこは転々としてたなぁ。あてに出来るワル友もいな
かったしね~。今日はこっち、明日はあっち…


そんなある日、すっごい夕立にあってさ、町の通り歩いててずぶぬれになっちゃったんだ。
そんで思わず、いつもは通らない筋に迷い込んじゃったってわけ。
見ると、ちょっと良さげなひさしのお家があったんでね、雨宿りしてたんだ。

そしたら、ふいにドアが開いてさ、中から若い男の人が出て来た。まつ毛の長い切れ長の目を
してて、前髪を垂らしたちょっと甘いマスクの人…(けっこうイケメン♡)
「おや、どうしたんだいこんな所で。よかったら、入って…」
「え、あたし?」
「外は土砂降りだよ、遠慮しなくていいから、入って。」
「だって、あたしッ…こんな格好だしさ、汚れてるよ?そりゃ悪いよ…」
「ほらほら、入って。」
え~!どうしよう?って思ったよ。でも、悪い人には見えなかったし、正直助かるし。
「じゃあ…ちょっとだけ…」って言って入っちゃった。
男の人の部屋って初めてだったけど、中は意外ときれいにしてあって、すごくスッキリしてた。
珍しかったんで、へえ~って思って辺りを見わたしてると…
「ずぶぬれじゃん、拭いてあげるから、じっとしてて。」
「え?やだ…いきなり?」
その彼、優しく私の頭タオルで撫で始めたのにはビックリだよ…馴れ馴れしいってか…ちょっと…
「まあまあ、こんなに濡れたままで、冷え切っちゃうと困るでしょ?」
「…だ、だれにでも、そういう事するの?……でも、ありがと…。」
部屋が快適温度のせいか?だんだん体の湿気も落ち着いてきた。
「お腹減ってない?これ、家の有り合わせなんだけど、どうかな?」
「え??さすがに…そこまでは…」
彼はわざわざ食事まで出してくれた。…たしかにお腹も空いてたし…もう部屋にも上がっちゃってるし…
「じゃあ…ちょっとだけ…」

そうやってお言葉に甘えて食べてたら、そのうち彼、スーッといなくなっちゃって

「あれ?…どこ、どこ、ねえ?」

辺りを見回すと、隣の部屋の二人掛けソファーで本を読んでた。私は黙って暫くその横顔を見てた。
(…へえ~、白いページをジッと見つめて…あんなふうに、本読むんだぁ…)

私が食べ終わったのにも気づかないで熱心に読んでる。なんかもう…こっちの世界から遠く
離れてっちゃったみたい…。 なんの本?…読んでるんだろう?
私はぜったいお邪魔しないように、と、忍び足で近づき、そお~っと彼の隣に座った。
「おっと!ビックリした。」
気付いてくれたのが嬉しくて、私はジッと彼の目を見つめた。そしたら…

「キミ、かわいいね…そのしましまの尻尾…」

私はそれに応えて甘い声を漏らした。「ごろにゃ~ん♪」





おわり




管理人
ケニー
副管理人
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参加
受付中
(今すぐ参加可能)
公開
全公開
カフェの利用
朝10時~夜24時
カテゴリ
自作小説
メンバー数
17人/最大100人
設立日
2024年02月18日

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