「私やっぱり、今日から向井秀徳を目指すわ」 そう言うが早いか、彼女は理科室を出て行ったらしい。 真夜中二時過ぎの田圃道から公道に出ると、バスストップに人影があった。放浪していた私の目に入った、確かな彼女の肖像である。自動販売機の灯明に映された彼女と、細い背中に背負ったテレキャスターだけが、その陰影を寒空に刻み、その薄い唇は聞き覚えのないメロディを口ずさむ。 「それ、弾けるの?」 こちらを一瞥した彼女は、あまり興味がなさそうな面持ちである。そして、返事代わりなのか、そっぽを向いてその歌を止めてしまった。 周りに鮮明なものは何もなく、ただ、遠くにうっすらと流れていく夜行列車の汽笛を、二人で聞くのみである。 -----斑鳩葵の肖像 好き音 NUMBER GIRL ZAZEN BOYS フジファブリック 9mm Parabellum Bullet 相対性理論 Blankey jet city 椎名林檎 東京事変 中田ヤスタカ Hazel Nuts Chocolate Cornelius スガシカオ 菅野よう子 Osamu Kubota Zektbach tomosuke Jimmy Weckl