菊池秀行のSF作品を語ろう!
- 2010/06/07 23:33:33
投稿者:おやすみ
菊池秀行といえば、エロスとバイオレンスの伝奇SFにおける多作家として有名です。
「魔界都市<新宿>」を舞台にした、美貌の主人公秋せつらが活躍する「魔界ブルース」シリーズ、魔界医師メフィストシリーズ、などの新宿物。
妖獣や妖魔との戦いを描いた「闇ガードシリーズ」「妖魔シリーズ」等々の作品
ジャイナブルの「吸血鬼はんたーDシリーズ」「トレジャーハンターシリーズ」などもあります。
そういった作品については、別の機会に譲りますが、SF作家としての実力は本物で、何時か本格的なハードSFを書いてくれないか、と願望を持っていましたが、無理そうですね。
その中で数少ないSF作品で、菊池ワールドを語ってゆきたい、と思います。
トップバッターは、迷いましたが「風の名はアムネジア」です。
(続きは明日書きます!)
あっちも新作を読みたいですね。
8/5発売の最新刊ですが、もう23巻ですか。1983年に第1巻がでているので、28年間では少ないのかな。
しかし、このシリーズは他のシり-ズと同様に、当然のごとく未完のまま終ることになるでしょう。
シリーズ物で、キチンとしたラストを迎えた菊池作品って、あったかしら!?
記憶を検索しても、マンガ原作の「魔界都市ハンター」「黙示録戦士」「魔界学園」などしか思い当たらない。
さておき、内容はアマゾンから引用。
死を賭した美女の依頼を受けて、Dはヴァン・ドーレン公爵の下を訪れた。領民も野盗も〈都〉の調査団も、すべての者が公爵のある発明品を求めて殺到する。世界を変えるというその発明品とは何か? 種としての衰退期を迎えて果てしない落日のつづく冬に、孤独な貴族・虎王は静かにDを迎えた。
吸血鬼ハンターDは、「木枯らし紋次郎」を思い出させます。
「あっしには関わりのねぇこって」と言いながら、事件に巻き込まれていく木枯らし紋次郎と、
吸血鬼と人間との関わりとは離れた所に居ながらも、関わらずを得ないDの姿がダブります。
今回の作品では、筆者自身が後書きで書いているように、
吸血鬼サイドの視点からストーリーが展開され、
主人公は吸血鬼の虎王と言っても過言ではないでしょう。
前作の外伝もそうでしたが、吸血鬼サイドからのストーリーが今後、多くなるようです。
吸血鬼ハンターDの外伝ですが、魔界都市シリーズのように、
登場人物ごとに外伝が創られていくことになるのかな?
主人公である貴族グレイランサーは、吸血鬼ハンター22巻悪夢村にでてきた
貴族ですが、かつて、貴族と外宇宙生命体が壮絶な戦いを繰り広げたときの貴族側の
立役者です。
この作品は、そのときの戦いを貴族側の視点から見た世界となっています。
本家の吸血鬼ハンターシリーズは、水戸黄門と同じようにマンエンリ化の傾向が
強くなっていますので、こうした視点を変えた作品は新鮮味を覚えます。
残る作品群は
①トレジャー・ハンター
②吸血鬼ハンターD
くらいしか、残ってないような。
そういえば、OVA作品の幻夢戦記レダも原作は菊池秀行だったね。
作画原作のいのまたむつみが好きで、見たがあまり面白い作品では
無かった記憶が・・・。原作は読んでないです。
やっぱり、荒々しい劇画タッチが似合うと思うのは私だけ?
近未来の渋谷を舞台に抗争に明け暮れる不良少年の集団。
しかし、そんな彼らを狙う暗殺者の手が。
ガンアクションの連続ですが、菊池作品にしてはおとなしく、
超兵器などや、すごい超能力がでてくるわけではありません。
小気味良いストーリー展開で一揆に読ませる作品ですが。
オチがいまひとつ物足りない作品でした。
サイボークや死人は出てきませんが、デビュー当時の魔界行を
思い出せる文体で書かれています。
やはり、これも絶版ですので、中古本を見つけたときに購入を!
読んでみたいです。
8月に刊行された「影恋」を読了。
<帯封>
「達樹が想いをよせた涼子には、死んでもなお妻に心を残す夫の幽霊が憑いていた。何とか霊と切り離し、涼子を平穏な日常生活に戻らせたいと願う達樹の想いを知りながら、涼子は夫の霊に見守られながら送る静かな生活にも心を断つことができない。達樹が霊の攻撃を受け、涼子が世間と隔絶した生活を選んだとき、この奇妙な三角関係は思わぬ展開に晒されることになった。名手が描く異形の恋、平成版雨月物語。 」
作者の名前を伏せて、読んでもらったらほとんどの人が菊池秀行とは思わないでしょう。
彼のホラー小説・伝奇小説みたいな大げさな作風でなく、淡々とした調子で物語は
綴られていきます。
家に取り付いていたヒロインの夫は、自分が幽霊であり、俗世間とは何の関わりも持てないことを
自覚しており、妻の主人公に惹かれる気持ちもそれで良しとしていました。
自分が何で成仏できないでいるのか、なぜ幽霊になったのか、分からないまま、傍観者としての
立場をとりつづけようとします。
しかし、知らず知らずの内に、心の奥底では主人公に対する嫉妬が生まれ、意図しないままに
主人公に呪いをかけてしまう。そうした気持ちが生まれるとともに、生前小説家であった彼に
小説を書きたいという」欲求が生まれ、物理的にこの世に干渉できないはずの幽霊が小説を
書き始めることができるのでした・・・・・。
物語は怨念の世界を強調することもなく、淡々と時間は流れていきます。そして、書かれていた小説に
完の字が打たれるときが。
結末も淡いエンディングになっています。もともとストリーテラーとしての才能は持っている人ですから
こうした小説は書けて当たり前なのですが、やはりSFには戻ってくれないようです。
今、アマゾンで覗いてみたら、やはり絶版になっていました。中古価格で487円でした。
この本を読んだとき、なぜジョイナブルでの出版?と大きな疑問符が浮かびました。
野菜クズや雑草からでも、天上の美味を作り出すイカモノ料理の天才、
内原富手夫(ないはらふてお)が主人公なのですが、この名前で何か
気づきませんか?
そうです。混沌の闇に集うナイアルラトホテップ、クトゥルー神話の他の神々もたくさん
でてきます。つまり、クトゥルー神話のパロディホラーなのです。
この本の出版は1984年ですから、クトゥルー神話は今ほどメジャーな物でありませんでした。
ましてや、読者の子供達は、ほとんど知らなかったはずです。
それを大胆にもネタにするとは、出版社も思い切ったことをする、と思ったものです。
中古本を見つけたら、オススの1冊です。
緑の背表紙が懐かしい〜のです。
以前先生にトークライブで握手をしてもらったのですが、柔らかい人柄に、更にファンになりました。
あんなに優しそうな人だったとは!
近未来の世界、、武闘派の不良少年達の集団が支配する無法の街「渋谷」。「男爵一族」「ラフズ」「流れ星」...などの武闘集団が覇権を争って、抗争に明けくれていた。渋谷のパワーバランスを保っていた集団のひとつが、何者かによって皆殺しにされたことから、この均衡は崩れ去り、各集団はお互いを疑い、敵を探して生き残りを図ろうとする。
こんなストーリーですが、魔界都市シリーズと異なり、超科学兵器とか、妖物とか、魔術とか、といったものは出て着ません。せいぜい、寿命を削る代わりに超人的体力を与えてくれる薬くらいでしょうか。
イメージ的には、「北斗の拳」の世界で、拳法の代わりに銃とナイフの武器という感じでしょうか。
菊池作品にしては、地味な世界設定です。そのせいか、あまり売れなかったようですが、
他の作品とは変わった味わいを持った作品です。
1) 神なし
2) ボクサー魂
3) グラフィック・プライド
4) 出来そこない
5) 出迎え
6) ニードリッパー
7) 送り番
8) 落ちてゆく
9) おまけ
10)カメラ・アイ
11)ゴリラ男の性生活
12)鍵物語
題名からも分かるとおり、多彩なテーマで書いています。
全体を通してホラー的要素が大きいのですが、菊池秀行の
ストリーテラーとしての本領発揮というところでしょうか。
その中から、一番SFに近い、作者自身も一番ん気に入っている作品を紹介します。
<出迎え>
学校と塾通いをしている主人公の13才の息子、その息子の帰りが時には遅くなることがある。心配する妻に懇願されて、主人公は息子を迎えに行く。
夕月が蒼く輝く頃、西から東に続いている川沿いの土手道を、ひと仕事終えた息子は東から帰ってくる。
息子は私の目の前まで来て、立ち止った。
「今夜は何をした」と主人公は息子に問いかける。
「銀行強盗」
「うまく行ったのか」
「いいや」
「なぜ、しくじった?」
・・・・・・・
こんな会話をしながら、月の下を並んで帰った。
2ヶ月ほど前に、息子の帰りが遅くなったことがあった。
そのときも妻に懇願されて、息子おw迎えに行った。
息子に遅くなった理由を聞くと、本屋で万引きをしたから。
盗んだ本はどうした、と問いかけると、逃げる途中で落とした。
それから、息子は度々帰りが遅くなったが、息子の話を聞くと、
様々な犯罪に手を染めたみたいだったが、盗んだ物は隠してある、と言い張る
息子を問い詰めると、みな置いてきた、と白状した。
必ず、人に見つかって逃げる羽目に落ち入るらしい。
主人公に2週間の出張が入った。
帰ってきた主人公の前に、妻は札束を積み上げた。
息子が銀行強盗をして帰ってきた、と。
2週間の間に帰りが遅いことが6回あり、妻が迎えに行った。
その度に銀行強盗や宝石店泥棒を成功させたらしい。
しかし、妻の話では事件にもなっていないらしい。
なぜなら、銀行や宝石店はこの世界にない場所の銀行や宝石店だから・・・・・。
こんな感じで、短編ですから一気にラストに向かいます。
今までの流れからいくと、次は「インベーダー・サマー」ではないか、と予測した人もいるか、と思いますが、
12編の短編集「ニー・ドリッパー」です。
インベーダー・サマーは大まかなストリーは覚えているのですが、
良い感想・悪い感想含めて、記憶に残っていないので、
自分の中では、それなりの作品だった、という位置づけでしょう。
こんなストーリーですが、作家本人が楽しみながら書いているのが、伝わってきます。
例えば、こんな場面もあります。
捜査中に出会ったH・G・ウェルズに、サガは悪戯っ気をおこし、「俺たちは未来から来た、切り裂き犯人を捕まえに来た」と話し、ウェルズは「未来から来た?この大嘘つきども、しかし、アイデアとしては面白い。時間の流れをたどれるのなら、ある種の機械を作って・・・」、なんてところにSFファンらしい遊び心を感じさせます。
にゃおこさんみたいに菊池秀行というと、○○○○のイメージが固まっていますので、著者名で拒否反応を起こした人、逆に期待して購入したがガッカリした人、が多かったせいでしょうか。あまり人気となることなく絶版となりました。
しかし、SF作品としては、おもしろい作品ですので、古本屋で見かけた際には、購入した方がお得ですよ、
この本のあとがきに、タイムマシーンもパラレルワールドも使わず、私流のやり方でもって、ジャックとその世界を再構成できないものか。とあり、その答えがこの作品となっています。
気象コントロール衛星の失敗により、北極の氷が溶けて、海面が150メートル上昇し、陸地の3分の1が海に沈んだ近未来。
大地を飲み込まれ追い出された人々は難民化し、船で海上をさまよって暮らす海人(シーピープル)として生きている。
多国籍企業ピロスマニ・エンタープライズは、過去のアルジェリアの地に、19世紀のそれを忠実に模した人口740万人、1、560平方キロの都市、倫敦(ロンドン)を建設した。
また、ロンドンの住人も19世紀の住人の役割そのままに生活している。その地に居住を希望する人々は、食料や生活を保障される代わりに、19世紀のロンドン人として、記憶を書き換えられ、白人として整形手術を受けさせられる。食料は十分に供給され栄養学的にも問題がないが、19世紀の生活の現状を維持するために薬が混ぜられていて、食べても食欲を満たすことない、腹一杯になっているにも関わらず飢餓感は減らない。
そんな生活でも、生活の安定を求めて居住を希望する海人は後を絶たない。
そんな倫敦で切り裂きジャックの事件も史実に忠実に発生するようになっていた。ただし、殺されるのは人間でなくアンドロイドの予定だったが、実際に切り裂き事件が発生したときには、人間が殺された。身代わりのアンドロイドは事件に合う前に破壊されていた。
国連犯罪対策委員会特別捜査官サガが派遣され、この事件は偶然なのか、それとも隠された意図があるのか、その事件の解明をめぐって物語りは進んでいきます。海賊などの犯罪組織、反体制派の暗躍、の中で次の犠牲者も人間が殺された。その犯人は、多国籍企業ピロスマニ・エンタープライズの社長ニッチモ・ピロスマニは何を意図して、倫敦を作ったのか、切り裂きジャックの真犯人を誰に設定したのか、人間が犠牲者となった真犯人は別なのか、謎は深まっていきます。
思って今まで生きてきました。
菊池先生、ゴメン!!
そしておやすみさん、ありがとう!!
ところで「宇宙人=高次生命体(この場合、人類よりも精神的・文明的にはるか上位にある
という意味で)」という解釈はとっても20世紀SFっぽいなあと思いました。
ある意味、レトロというか。
そういえば「ハルヒ」シリーズに出てくる「宇宙人」も、神に近い精神生命体だったな……
近頃公開された映画「第9地区」では、かなり毛色の変わった宇宙人像が
描かれていますが、これはリアル世界が複雑化してきた影響もあるのかな、
と思ったり。
次の作品紹介も楽しみにしています(^_^)>おやすみさん
ご多忙中、お疲れ様~♪
ストーリーは覚えているのですが、主人公たちの名前が思い出せず、ストップしています。
マイナーな作品なので、インターネットの世界でも触れられていないですし。
絶版のため、中古本を取り寄せていますので、ちょっとお時間ください。
もうそろそろ終りにしないと、マスイからネタバレでもいいんじゃない。
<シエル>
そろそろ頃合かも。
アムネジアの風は、ソフィアのその一員である宇宙人たちの手によって、人間の記憶を封印するために吹かされたのよ。
記憶を封印することによって、人類の本性を見極めよう、としたのよ。宇宙に進出させても大丈夫と判断された場合には、また、人間の記憶を戻すことになっていた。ソフィアはそうした観察者の一人だったのよ。
<沙耶>
そうやって、最後の審判が下るわけね。それで、最後はどうなったのかなぁ。
<シエル>
このラストがこの作品の一番良いところなのよ。ワタルは最後の審判が下るまえに、ジョニーとの約束を果たすべく、また、旅にでるの。この頃は菊池先生もまだ純真だったみたい。
ということで、ジョイナブル作品ですが、大人にも鑑賞できる内容の作品です。その後、アニメも作られましたが、アニメは最初に見ない方がいい、と言われています。(私もアニメ見ていないので、どうしてか知りません)
この作品の魅力が伝えられたか自信がありませんが、次の作品は「切り裂き街のジャック」です。
ワタルとソフィアが旅をしながら、いろいろな人々と出会い、地球の現状を知っていくわけだけど、この辺のストーリー展開は、石ノ森章太郎の「リュウの道」を思い出したわ。
<シエル>
そうね。ワタル達がエターナルタウンという街の2人の住人に会ったが、彼らは何故か記憶を失っていなかったが、会うたびにに人格が変わっていた。2人は街をコントロールするビックコンピューターの支配されていた。そのあたりは特にね。
「リュウの道」第一部で、リュウ達が生き残った人類の文明を探しているとき、滅亡前の文明をそのまま残している都市に出会った。その都市はコンピューターによって、完全にコントロールされていた。と似たような設定になっているわ。
テーマも第一部とは似ているわね。
<沙耶>
だけど、このアムネジアは面白い記憶喪失の仕方だよね。いわゆる記憶喪失は学習記憶・生活記憶は無くなっていないが、自己認識の記憶が無くなっている状態だよね。だけど、ここでは、学習・生活記憶の大部分は無くしているけど生きてゆける程度の記憶は残っているわけよね。
<シエル>
確かにテーマに都合の良い記憶喪失になっているわけだけど、ちゃんとした理由は設定されているわ。ネタバレになるから後で説明するけど。
ファーストコンタクト物の名作である「砂漠の惑星」(スタニスワフ・レム)では、蟻のような機械群生体が出てくるけど、彼らは、振動する超磁場を武器に、コンピューターや人間などの記憶を破壊した。記憶を破壊された人間は赤ん坊のような状態になり、彷徨のすえ、転落死したり、食料(缶詰)を空けられなく、餓死したりした。この方が科学的な説明が付くわよ。
紹介は、ゲストを迎えて、その方たちにやっていだきます。
一人目はシエル先輩です。彼女の出演作品の中では「教えて知得留先生」などのコーナーを受け持つなど、正統派の知識溢れる方でdす。
もう、一人は沙耶さん、写真が載るページだと絶対に出演してくれない方で、人間とは違った視点を期待します。
それでは、お二方どうぞ!
<シエル>
この作品は題名とおり、アムネジア(忘却)の風が吹き、人類が言語・知識などの記憶を忘れ、文明が崩壊したアメリカ大陸を旅している主人公から始まります。
<沙耶>
これ、近未来の199X年とかの設定でしょう。もうとっくに過ぎちゃっているじゃない。
<シエル>
この作品が発表されたのは1983年なのだから、近未来として設定したのでしょう。この頃の感覚でいうと、2000年を越える設定は21世紀になってしまうため、近未来ではなくなってしまうと思われたのね。
だから、199X年という設定は、他の小説でも多いわ。
<沙耶>
主人公ワタルが旅していく途中で知り合った美少女ソフィアと二人で、様々な生活を送っている記憶を無くした人々との関わっていく、といような展開だったわよね。
ワタルは記憶を無くさなかったの?
<シエル>
もちろん、一度無くしているわ。ワタルがいた生体研究所で脳の特殊手術を受けていたため、忘却からまぬがれた車椅子の少年ジョニーがその手術装置を使い、ワタルにある程度の記憶を取り戻させ、運転や銃などの知識と世界の現状を教えた、死亡したのよ。
(続く)
ところが、忙しくて見るヒマがなく、とうとう配信期限が昨日きてしましまいました。(シクシク)
記憶だけで書くか、また、ダウントードするか思案中です。ちょっと夕方までお時間を。
それもまた怖いですかね。
誰もがテレビの前に吸い寄せられ、離れられなくなる……おそろしい~☆
「明日」っていつの「明日」~!?