ことばの噴水(ふんすい)広場
- 2016/11/09 21:13:52
『今日の名言』 岩波書店 (※
https://twitter.com/iwanamishoten
http://www.iwanami.co.jp/meigen/
何気なく手に取った本の中に、ふと感心させられた言葉がある、そうした経験は
誰しもお持ちかと思います。また、もっとハッキリと、本を読む前の自分とは、行動する時の
気持ちが変化したとか、その一節(いっせつ)を読んだ体験が、その後の自分の考えの視野を
拡(ひろ)げる上で強く心に残った、そんな言葉(・活字の知恵)があるかもしれない。
もちろん、それを自分の胸の内だけにしまって理解(本との対話)を深めるのも
読書の愉しみかたです。でも時には、特別な経験を誰かに聴いてもらう事で、また新しい
解釈(かいしゃく)が生まれる、そんな事もありますね……て事で、もし、そうした元気づけられたり
感動した本、あるいは本の中にあった文章があれば教えて下さい。
※) 書き込む前の注意書きがゴチャゴチャとわかりづらいという時は、
以下の箇条(かじょう)書きは無視して、上掲(じょうけい)
『今日の名言』(毎日、自動で更新)の書式をご参考アレ。
文章を引用する決まりとしては『みんなのジュークボックス』とほぼ同じです――
・引用した元の本の名前(と、できれば出版社名)著者の名前、
または掲載(けいさい)誌、および記事の題名:一冊の本をオススメ
したい時は、本の題名と著者名だけでかまいません。
(「これを読め」と一言、自分の言葉で感想が添[そ]えてあれば宜しい。)
・対象(たいしょう)となるのは、小説(ライトノベルまで含めた
活字になったもの)や随筆(ずいひつ)、論説文(ろんせつぶん)、絵本、
詩集、新聞・雑誌記事と言った印刷(いんさつ)物です。
・映画の原作小説などでもかまいません。
ただし、今回はアニメや漫画は除外します。
・詩や短歌、俳句などの場合は、一度に五本を上限とします。
本文の合計が二百字程度に収まること。紹介文に関しては字数の制限は設けません。
はい、最初は面倒かもしれません。でも、ここで見た文章を他の誰かが読んでみたい、と思った時に、
すぐに捜(さが)せるようにするための親切ですから、紹介する以上は、がんばって責任を持ちましょう。
誰かの教えてくれた素敵な言葉で、みんなが少しずつ、前へ進む勇気をもらえると良いですね。
では、恥ずかしがらずに、とりあえずの、ご参加をお待ちしております。
>オリンピックはマイナースポーツのためにあると、
>私は思っている。
(中略)
>それにマイナースポーツは税金を入れてもらわないと、
>強化できないのが現実。
(中略)
>だから今後も、国民に応援してもらうために、スポーツの世界にいる人々が
>国民と向き合ってオリンピックについて議論するべき。
「山口香JOC理事に訊く」西村カリン(仏リベラシオン紙東京特派員)
ニューズウィーク日本版:2021年6月8日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/72350-jocjoc-ioc-iocioc-iocioc-ioc-iocjoc-joc_4.php
◇
今年のように五輪ができない場合、
各競技で世界選手権を毎年やれば 選手は四年ごとに
選手生命を棒に振るリスクも 大規模な感染症への防疫対策、
公衆衛生への負担も分散できるはず…なんですが、
ところが、プロリーグも成立しないような競技だと 五輪での成績にくらべると
「たかが、世界選手権」という話らしい<今年、某世界選手権で優勝した日本人選手が
NHKで五輪への熱い想いを語ってるのを聞いて 仰天したばかり
オリンピアン(五輪出場者)こそ平和の使者、とか希望の証、と
アスリートを神からの贈り物みたいに 自画自賛する元選手が 約数名いますが、
社会に向けて 自己表現をしたいなら、選手だったころの名前でしゃべっていないで
「社会で議論するための知的訓練を受けてから」出直していらっしゃい そういう話です。
その点で、山口さんの話は 情緒やポエムを排した 正攻法の意見提起だと思います。
>焼夷弾というのは36本が一束になっており、
>上空1000メートルより下のあたりで破裂してその1本1本が
>バーッと広がって落ちてくるんですね。
(中略)
>今でも胸に焼き付いているのは、それを訓練通りに必死になって
>消そうとしている人々の姿です。訓練では手袋をはめて、
>家の中に落ちた焼夷弾を手に持って庭へ投げろ、と教えられていました。
『戦後74年 いま語られる“半藤少年”の「戦争体験」』
半藤 一利:「文春オンライン」2019/08/15
https://bunshun.jp/articles/-/13354?page=4
『10万人死亡「東京大空襲」の翌朝、政府が何と言ったかご存じですか』
大前 治(弁護士):「現代ビジネス」2018/03/10
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54614
◇
さて今日は8月15日。ネットで、最近の大学生に戦争関連の創作物
(映画や漫画・アニメ、童話、小説)について尋ねた週刊誌記事をみました。
ウェブ記事の内容には惹かれなかったのですが
その横にあった、半藤氏の聞き書き記事には興味を持ちました。
というのは上述、「焼夷弾(しょういだん)の消火訓練」について
保存してあった別の記事に詳細が書いてあったのを思い出したからです:
大前氏記事の冒頭、前回記事URLもできればご参照あれ。
(ちなみに、戦時中のドイツも空襲を受けており、
戦後に市民への国家賠償[こっかばいしょう]が認められましたが、
日本では”しょうがない”という事で、政府は戦後補償を免れています。)
また、半藤氏の記事抜粋(ばっすい)直後に
非道な無差別爆撃を企図したカーチス・ルメイとの名が出てきます。
文藝春秋社の記事と言う事で、省略されていますが
この軍人は広島の原爆投下にも係っています。そして航空自衛隊の創設に
”功績が”あったとして、1964年に高位の叙勲(じょくん)を受けています。
さすがに当時、国会で大問題にされたようですが、
高度成長期とは言え、まだ先進国でもなかった時分に
佐藤首相は「大国の民とはいつまでも過去にとらわれず」と大得意でのたまい
当時の知識人や、家を焼かれた少なからぬ国民から目の敵にされていたようです。
大学生以上なら、活字や史料「でも」紐解いてほしいと思います。
「このような写真は千の言葉よりも伝える力がある」
下記の記事によると、核戦争反対、核兵器廃絶の立場をとるカトリック教会
その総本山であるバチカン・ローマ法王フランシスコ氏が、この11月に長崎と広島を
訪れるのに先立ち、最近、信者に向けてこの写真の意義をあらためて訴えたとあります。
たまたまですが、僕もこの写真には心を強く揺さぶられたのを覚えています。
確か6,7年以上前だったと思いますが、
行きつけの書店で平積みにされていた白黒写真集の表紙に目が留まりました。
それは乳幼児の弟の遺体を背負い火葬場へやってきた10歳くらいの少年の写真です。
※:背中に背負った、なきがらはケガもなく眠っているように見えますが、
そんなむごい写真は恐ろしい、という方は見ないようにして下さい。
>写真は、米軍の従軍カメラマンだった故ジョー・オダネルさんが1945年に
>長崎で撮影。少年が焼き場で弟を火葬する順番を待っている場面だとされる。
『「焼き場に立つ少年」あの子じゃなかか ローマ法王注目の写真』
西日本新聞 2019/8/5
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/532764/
記事にはオダネル氏は亡くなったと書かれています。
でも、来日当時20代だった同氏は、まだ数年前まで日本の報道機関向けに
自身の従軍体験をふり返る話をしていて、その聞き書き記事を何度か目にしました。
一方、日本政府は広島や長崎の平和式典にはタテマエとして参加はするものの
”核保有国が乗り気でないから、参加しても意味がない”と対案を考えるそぶりさえ見せず
カッコぶーな事を言って核廃絶平和条約の締結(ていけつ)に署名する事はしていません。
第二次大戦後、1951年に主権を回復して以降
実際には核保有国の戦略の内側で”平和”の恩恵(おんけい)を受けてきた日本には、
現状、外交上では限られた選択肢しかないことは理解します。
でも敗戦から74年、戦争を直接知っている世代がどんどん亡くなっているさなか、
世界の中の「唯一の被爆国」という立場を
たんに言葉の上だけの空念仏(からねんぶつ)に終わらせていていいのかどうか、
今の戦後政府を見ていると疑問を感じざるを得ません。
一枚の写真、事実からでも
平和や社会問題を考える機会として大切にしてほしい、そう願います。
南の夜空に、火星が大きく見えているのにお気づきでしょうか。
数年に一度ある地球と火星の最接近は、もう過ぎてしまいましたが、
8月いっぱいは、まだまだ赤く輝く火星の姿が見られるそうです。
以下文末、2300年までの火星最接近の日付も分かる! お得な()一覧表つきです。
いやあ、星の寿命や宇宙の法則・秩序からしたら、
人の一生って何の意味があるのかと個人的には謙虚な気持ちになりますねえ。
> 今回は、2003年のときに比べると確かに火星の視直径は
>ほんの少し小さくなりますが、夜空で明るく輝く火星の姿は、
>私たちの目をおおいに引きつけることでしょう。
>
> ちなみに、2003年の大接近のときよりも地球と火星が接近するのは
>2287年8月29日です。
『次回以降の火星最接近はいつ?』 :自然科学研究機構 国立天文台
https://www.nao.ac.jp/astro/feature/mars2018/next.html
https://www.nao.ac.jp/astro/basic/mars-list.html
◇
さて、小・中・高・大生は夏休みです。
”ラジオ 子ども電話相談室”ではありませんが、
小中学校、高校の理科の教科書で扱う内容に「少し」興味を持つのに
面白い記事もあるような気がします。
以下、国立天文台の出版している統計資料である『理科年表』と言う
……無味乾燥、分厚い冊子があるのですが、それを解説した記事です。
暇(ひま)な時に眺めていると、物知りになれますよ。
「徹底解説 『理科年表』」:自然科学研究機構 国立天文台
https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/kaisetsu_top.html
2.文体を作る
結論から言えば、文体を作るには、あらためて一定量の英文を
暗唱する必要があります。ではどんな英文を、どのくらい暗記すれば
いいのか? ズバリ、旺文社の『表現のための実践ロイヤル英文法』の付録、
「英作文のための暗記用例文300」を、まず覚えてみることをお薦めします。
『文体を作ろう!
:それなりに英語は読めるのに英作文が極端に苦手なあなたへ』
”Write off the grid.” 「阿部幸大のブログ」 :2018-02-22
http://abc-kd.hatenablog.com/entry/2018/02/22/142829
◇
僕は、高校時代に暗記用例文集を買った事はありませんが、
でも、英英辞書を引いたり、英和辞書を引いて自分の関心のある英語記事から
単語や熟語をノートへ抜きだすことを繰り返して、独自に例文を集めて勉強しました。
もっとも、同じような事に気づいても
阿部さんのように東大へ入れる英語力が身につくとは限りません。
ただ、夏休みの読み物としてタメになる勉強法なので、中高生の方は是非ご一読あれ
以下は、北海道出身である阿部さんの、
道民時代をかなり自虐(じぎゃく)的に振り返った上での、
首都圏と地方の間の教育格差についての現状分析です:”時代錯誤(じだいさくご)な
話を盛って田舎を馬鹿にするな”と激怒する人が、かなりサイトへ抗議してきたらしい
筆者のお父さんは高齢の上
地元に第一次産業従事者が多ければ、ありうる話だと僕は思いましたが…
「現代ビジネス」 :阿部幸大の記事
http://gendai.ismedia.jp/list/author/kodaiabe
確かに、今どき、こんな昭和(というか、戦前戦中みたい)な話が、
しかも1987年生まれの筆者の実体験から出て来ようとは驚きですが
ただ、沖縄や、本州の山間部ほど極端ではないにせよ
地方でも県庁所在地を外れると話が通じない大人の居る地域は珍しくありません
今の日本は、教育機会や社会保障基盤の格差――
今までの人口政策や福祉行政のツケ払いといった、これまで放置されてきた
さまざまな社会問題が、もはや誤魔化せない処にまで来た、そんな気がします
日本に住み、日本の家族と暮らしている場合、
最初に母国語(L1言語と言います)ができなければ、第二カ国語(L2言語)を
マスターし、両方の言語を自由に操作出来る「バイリンガル」にはなりません。
(中略)
ちなみにセミリンガル/ダブル・リミテッドは「両方の言語において年齢に応じた
言語習得度に満たない中途半端な二ヵ国語使用者」という意味です。
『日本育ちの子をインターナショナルスクールに入れるのは愚の骨頂だ』
西宮 凛 :現代ビジネス 2018/01/16
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54131?page=2
◇
以前、『今日の四択クイズ』で書いた事と同じことを
通訳資格を持っている専門家が解説しているのを見つけたので、よろしければどうぞ。
先に書いた、内田樹氏のコラム記事と重なる部分も多くあります。
ところで、大学受験の予備校講師である林センセイが
「英語のできない親の英語熱」をテレビで批判して、少し叩(たた)かれていたようですが
まともな通訳者の間では、こういう話は常識です。
東大は出ていても、現代文の先生である林さんのセッキョーより、
専門家の話がもっと広く共有されないと、素人が何度でも同じ騒ぎを起こすことになります。
中学生なみの雑談しかできないハーフタレントを高額ギャラで使っているマスメディアも、
好い加減、専門家の知見に学ぶべき、そう思いますね。 カタコト芸で飯が食える国は日本だけです。
言葉は道具じゃない。僕たちが言葉を使うというより、僕たち自身が言葉で作られているのです。
僕たちが言葉を支配しているのではなく、むしろ僕たちが言葉によって支配されているのです。
『「街場の文体論」 韓国語版序文』内田樹 :2018年02月01日 15:25
http://blogos.com/article/274989/
◇
例えば
「事実は一つでも、真実は必ずしも一つではない」と言う意味を考えれば――
①事実関係、論理として、その前提条件の正誤を判断する
→ 原因と結果の関係で、
答えは一つの意味にしぼることができる
②自分の主義、主張を元に、各々の論者が物事の価値(値打ち)を判断する
→ 同じ前提を元にしても、主義・主張の立場が違うと、
その評価(価値判断)と「解釈は」複数あり、論者の間で必ずしも一致しない
上記二つの判断(の違い)がある事に気をつけないといけない。
ところが最近は、本来ならば争いが少ない筈の①さえ
”対話の物差し”である言葉の意味をズラせてすり替える、または知性や教養が足りない事で、
無意識に不正を働くごまかしが社会全体で多く目につきます。
つまり内田氏は、そうした日本社会のほころびを批判的にとらえて、物申していると言う事です。
ただ、僕は内田氏の社会批評にはついていけないところもあります。
(例えば、差別や卑劣な言説を振りまいている人間さえ、日本の恥と切り捨てずに
社会の仲間として扱わないといけない、とか、カッコつけすぎなところですね)
また、僕が読んできた、もっと昔の思想家たちと較べると、かなりショボい、と頼りないところもある。
でも、この論説自体は、
大学で、研究者として、たくさんの知識書を読んできた知識人として
社会に自分の問題意識を問いかける――との点から、この先生が嫌いな人も、
一度は耳を傾けるに値する話ではないか、そう思い紹介することにします
論説文になじみのない人には、意味が解らない部分もあると思います。
でも日頃から小難しい本を読むと
以前は理解できなかった話も分かるようになります>この導線先のコラムを読んだだけで
内田氏の本を買わずに済む
難しい話に関心を失わない事も大切です
>約1億1000万年前、現在のカナダ西部に生息していたこの草食(植物食)恐竜は、
>氾濫した川にのみ込まれ、海まで流されて、堆積物に埋もれた。そのおかげで、装甲が
>細部まで美しく保存された。
「奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点」
PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK :2017.06.13
文=John Pickrell/訳=ルーバー荒井ハンナ : 『NATIONAL GEOGRAPHIC』
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/photo/17/052200118/
◇
子どもの頃に耳鼻科へ行くと、待合室には
『NATIONAL GEOGRAPHIC』(ナショナル・ジオグラフィック)などの科学雑誌が
置いてあったのを覚えています。ネットの普及(ふきゅう)した最近と違い、僕の子どもの頃は
科学雑誌や図鑑は図書館に行くか、親が子どもに買い与えている教育熱心な家でないと
手にする機会はありませんでした。
さて、”奇跡”(笑)と聴くと、何だか感動を押し売りするウソ臭い言葉に聴こえるネット時代ですが
しかし上掲(じょうけい)の恐竜写真は、小細工(こざいく)なし、正真正銘(しょうしんしょうめい)
学問の上での奇跡、と言って差し支えありません。広告の美辞麗句(びじれいく)とは、次元が違う。
1,1億年以上を経て、人間の見世物になってしまったドジな恐竜ですが
こんな草食系の恐竜が肉食恐竜の餌(えさ)になっていたかと思うと、ほ乳類である人間が
これだけ繁栄(はんえい)しているのも、まさに偶然が生んだ奇跡と言う気がしてなりませんね。
ところで、『NATIONAL GEOGRAPHIC』の記事は無料で全部読むことはできません。
でも恐竜に限らず考古学とか、遺伝子分析を用いた最新の調査結果なども記事になっています。
そして、それらは中高生の理科や社会の勉強とも関連します。つまり、全部タダ見できなくとも
副読本としては申し分なく、それが後に思わぬ学習効果を生む事があります。
将来の進路を決める上でも、もしかしたら役に立つ話や関心や興味を拡げる話も載っている
……「かも」しれない。
青春時代に、色んなことに好奇心を働かせて得てきた
知識や挑戦が大人になってから効いてくる――人生ってそういうものだと思います。
終ってしまった恋がある
これから始まる恋がある
だけど 僕たちの恋は決して終りはしない
なぜなら 終らせないと僕が決めたから
自信をもって言えることは この気持ちが本当だということ
いろんなところへ行ってきて いろんな夢を見ておいで
そして最後に 君のそばで会おう
「君のそばで会おう」 :銀色 夏生 『君のそばで会おう』 (角川文庫)
人として、この世で生きられる時間、そして一度に行ける場所には限りがある。
つまりは――
「会者定離(えしゃ じょうり)」であるからこそ、「一期一会(いちご いちえ)」が意味を持つ
そう考えて、現実での対話はもちろんのこと、
時にネットの中だけであっても、誰かとの出逢いを大切にしたいと考えています。
ニコタで教えて貰った、僕の聴いてこなかった音楽や知らなかった詩の世界、
親しい人が話題に出さなければ手に取る事もなかった本の名前や、その一節、それらを通して、
自分とは別の道を選び取り歩んできた、
そんないっしょうけんめいな誰かの生き方をたどろうと試行錯誤(しこうさくご)する。
いつまでも、これからも、残された言葉と、そこから教訓を学んだ主の声を訪ねて、
僕は自問自答を繰り返す。それがたぶん、感傷を越えて、あなたのそばで会うということでしょう。
どこへ行っても、きっと幸せでいてください。
34
風のおかげで樹も動く喜びを知つている
(中略)
音楽が終わる
私に生の重みが滲(し)み透(とお)る
私がうつむくと
ふと幸せが私の顔をのぞきこむ
私は生に用事がないので
いつも歌つてばかりいる
だが私は頌(ほ)めることを知つている
空の青いところへたどり着くと
きつと誰もいない
あれは恵み深い嘘(うそ)なのだ
36
私があまりに光をみつめたので
私の影は夜のように暗かつた
私はさびしさを計算する
しかしそれには解がない
ふたたびあらゆる遠さが私に帰つてくる
私は私とだけ親しい
私の言葉は捨て所がない
私はそれを汗に変えようと企(たくら)む
(中略)
しかし私が感傷(かんしょう)を着ようとすると
不幸なことに袖(そで)が短かい
私は幼い頃を思い出す
「六十二のソネット」 谷川俊太郎 『空の青さを見つめていると』 角川文庫
『かないくん』 作 谷川俊太郎 絵 松本大洋 発行元:(東京糸井重里事務所)
http://www.1101.com/books/kanaikun/
『裁判所にて』 作・絵 ガブリエル・バンサン 訳 尾埜 善司 (BL出版)
『老夫婦』 作 ジャック・ブレル 絵 ガブリエル・バンサン
訳 今江 祥智 (BL出版)
https://www.blg.co.jp/blp/n_blp_find.jsp?genre=ガブリエル・バンサン&PAGE=3
◇
どれも、都会の大きな本屋さんか、大きな図書館にしか置いていない本ですが、
もし目にする機会があったら、手に取ってみて下さい。『老夫婦』は、もとは1960年ごろにフランスで
人気があったシャンソンの歌詞に、絵本作家のガブリエル・バンサンが物語風に挿絵(さしえ)をつけた物。
ほかの二冊は手に入れましたが、『老夫婦』は、いつかフランス語版を買おうとチャンスをねらっています。