もう二度と会えないんだ、これが最後なんだと。そう思いながら私は人と会ったりしゃべったり、次に会う約束をしたりしている。そうすると、このくだらない冗談も甘やかで悲しい記憶になる。目の前が急にせつない色に染まる。
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
もう二度と会えないんだ、これが最後なんだと。そう思いながら私は人と会ったりしゃべったり、次に会う約束をしたりしている。そうすると、このくだらない冗談も甘やかで悲しい記憶になる。目の前が急にせつない色に染まる。
経験を重ねて、重ねて。意味は深く、深くなる。何かの花びらのように、何もかもがいっぺんに、ほどけるようにわかる時が来る。
空に稲光、昼間だというのに暗闇が広がる。まもなく雨粒が落ちてきた、地面に点々と雨の痕が散らばった。少しずつ密になってゆく、いつしかまわりは雨模様。あまりの豪雨にまわりの音がかき消され、空気ばかりが洩れている。音が聞こえないくらい、私は口笛を吹いてみた。
西洋梔子のことをガーデニアと呼ぶ。梔子といえば梅雨どきにあまく匂う花で、母が好きな花で庭に植えてある。夏の香りを真冬にまとわせて、母は旅だって逝った。梔子の匂いは私も好きで、大切に育てている。花の時期にはかすかな匂いが部屋に残る、庭に出ると濃く匂う。残り香は鮮明で、風通しの良い場所ほどかおる。匂いと...