もう日が暮れるといふのに
風はまだ小川のさざなみをゆすつてゐる
おまへが遠くへ去つてから
この窓のそとには いつも冷たい寂寥がひろがる傾いた光が 部屋の隅々に長い影をのばす
それは僕の孤独のやうに じつと動かない
足元にひつそりと咲く野菊のやうに
僕はふたたび 誰もゐない道に眼を向ける風よ おまへは...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
もう日が暮れるといふのに
風はまだ小川のさざなみをゆすつてゐる
おまへが遠くへ去つてから
この窓のそとには いつも冷たい寂寥がひろがる傾いた光が 部屋の隅々に長い影をのばす
それは僕の孤独のやうに じつと動かない
足元にひつそりと咲く野菊のやうに
僕はふたたび 誰もゐない道に眼を向ける風よ おまへは...
おまへの髪をさらふのは どこの秋の風だらうか
さうして青い空の深みから やはらかな光が降る
僕はまた静かな道をひとり歩いてゐる
なつかしい面影をこころに抱いて――小川の面(おもて)をわたる風が
すずしいささやきを置き去りにする
おまへは今どこで何を思つてゐるだらう
とほい倖(さち)の音を聞くやうに&...
それから、何年の歳月が流れたことでしょう。
あの人が消息を絶ってから、私の元には、生きているという便りも、あるいは死んだという報せも、何一つ届くことはありませんでした。けれど、あの日以来、私の中で何かが決定的に変わってしまったのです。毎年、あのどこまでも高く透き通った青空が広がり、冷ややかな風が吹き...
あの人が乗った汽車が、赤くて小さい尾灯を夜闇の向こうへ消し去ってから、もう一週間が経ちます。
秋麗の風は、相変わらず冷たく、容赦なく、私の頬を叩き続けています。あの人が言っていた通り、この風は世界からすべての温もりを奪い去ろうとしているかのようです。昨日、私の元に、一通の汚れた封筒が届きました。
中...
ねえ、あなた。どうかお願いですから、この汽車の汽笛が鳴り響くまでのほんの数分間だけ、私のこのみっともない泣き言を、黙って聞いてはくれないでしょうか。夕暮れの、誰もいない駅のホームに、秋麗(あきうらら)の風が容赦なく吹き抜けてゆきます。
世間の人たちは、あのどこまでも高く透き通った青空を仰いで、麗しい...