小抽斗の中の襟巻と首飾り、どちらの品も母の形見である。誰しも形見みたいなものは、ひとつくらいは存在するだろう。どちらの品もよく覚えている、母のお気に入りで出かける時にはよく着けていたから。あまり装飾品の類は持たなかった母、唯一の品と言ってもいいくらいだ。小抽斗にはひとつだけ蝙蝠をかたどった取っ手がつ...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
小抽斗の中の襟巻と首飾り、どちらの品も母の形見である。誰しも形見みたいなものは、ひとつくらいは存在するだろう。どちらの品もよく覚えている、母のお気に入りで出かける時にはよく着けていたから。あまり装飾品の類は持たなかった母、唯一の品と言ってもいいくらいだ。小抽斗にはひとつだけ蝙蝠をかたどった取っ手がつ...
自分の部屋の傷んだじゅうたんを見ながら、幼い頃に父に連れられて海外に何度か出かけた、そんな子供心に残る不思議なお店。当然お店に書かれている文字を読めるはずもなく、父に尋ねると空飛ぶじゅうたんの店だと言った。疑うことを知らない子供の私は、それはもうときめいたのは言うまでもないこと。アラビアンナイトとか...
うれしい気持ちが顔に出る、私。だから、奴らの前ではわざと神妙な顔を作る。電車の中で、よくニコニコしている私。これではいかんとうれしい顔は、もうしばらく後にとっておこう。もうしばらくのあいだ。
三番目の信号の角にある花屋を、私は勝手にユメノの店と呼んでいる。ちゃんとしたお店の名前があるのに、いまだに覚えていない。こじんまりとしているが、店も花も色とりどりで賑やかだ。花を贈る人の気持ちや用途に合わせ、ぴったりの花言葉を持つ花や、なかなか手に入らない花。また、特別な贈り物の時用に飾り方が実に上...
何度も何度も言い続けることが、大事だと分かったから。同じことを何度もいろんな言い方で、伝え続けることがいちばん、大事だと分かったから。
私はもうどのことも、心配はしない。