ああ、長崎。この街は、どうしてこうも坂ばかりなのでしょう。
息を切らし、自らの罪の重さをふくらはぎに感じながら、私は本河内の急な石段を這うようにして登っておりました。滑稽な姿です。まるで地獄の針の山を登る亡者のような、それでいて一丁前に「救われたい」などと願っている、恥ずべき男の姿です。 ...
ああ、長崎。この街は、どうしてこうも坂ばかりなのでしょう。
息を切らし、自らの罪の重さをふくらはぎに感じながら、私は本河内の急な石段を這うようにして登っておりました。滑稽な姿です。まるで地獄の針の山を登る亡者のような、それでいて一丁前に「救われたい」などと願っている、恥ずべき男の姿です。 ...
ピレネーの冷たい風が、コートの襟を叩く。
マッサビエルの洞窟は、
誰かの罪を飲み込んだ後のように口を開けていた。羊飼いの娘は、幻を見たという。
俺たちの世界じゃ、そいつは「イカれてる」か
「見ちゃいけないものを見た」かのどっちかだ。
だが、彼女が指先で土を掘り返すと、
そこから溢れ出したのは血じゃな...
ああ、神様。あなたは本当に、意地が悪い。
ピレネーの麓だか何だか知りませんが、こんな遠いところまで、わざわざ恥を晒しにやって来る人間の身にもなっていただきたいのです。 ルルド。そこには病を治す不思議な水が湧いているのだと、誰かが書いた古ぼけた雑誌の端に書いてありました。私はそれを、鼻で笑いました...
桜の降り積もる墓標の陰で、わたくしがそうして、甘い絶望の淵を彷徨っておりますと、
不意に、遠い港の方から、低く、重々しい汽笛の音が響いて参りました。ボーッ、という、あの心臓を直接掴まれるような響き。それは、わたくしのような不調法な人間をも、無理やりにこの現世(うつしよ)へと引き戻そうとする、無遠慮な...
春の日の夕暮れ、外人墓地の古びた十字架のあいだを、わたくしは独り、あてもなく彷徨っております。空は、死にゆく者の頬のような、淡い紅を帯びて参りました。
そこへ、折からの風に誘われ、桜の花びらが、まるでお喋りな精霊たちのように舞い落ちてくるのでございます。異国の文字が刻まれた、冷たい石の背中。
それら...