左胸の少し下に
皮膚が引きつれたような 痕がある
それは 弾丸が掠めた跡でも
愛に溺れた証でもないただの 愚かさの焼け跡だかつて俺は 信じていた
「言葉」には重みがあり
「約束」には命が宿ると
そんな御伽噺を 本気で信じて
守らなくていい盾を 構え続けていた雨の夜 差し出された傘の下に
毒が仕込まれ...
左胸の少し下に
皮膚が引きつれたような 痕がある
それは 弾丸が掠めた跡でも
愛に溺れた証でもないただの 愚かさの焼け跡だかつて俺は 信じていた
「言葉」には重みがあり
「約束」には命が宿ると
そんな御伽噺を 本気で信じて
守らなくていい盾を 構え続けていた雨の夜 差し出された傘の下に
毒が仕込まれ...
氷が溶ける音を
時計の秒針だと思い込んで
もう三時間が過ぎた正しさが 眩しすぎるこの街で
俺はわざと 影の濃い路地を選ぶ
真っ直ぐ歩けば 早く着くのは知っているが
最短距離で手に入る幸福なんて
安物のライターより 信用ならない「どうして そんなに 捻くれているの」
かつての女が 煙草の煙越しに聞いた...
空が泣いているなんて
安っぽい詩人の真似をする気はない
これはただの 湿った物理現象だ波止場に打ちつける雨は
すべてを洗い流すほど 潔くもなくて
ただ 俺の安いトレンチコートに
消えない染みを 増やしていくだけ「待っていろ」と言ったのは どいつだったか
律儀に待っている自分に 吐き気がして
俺は 錆...
重いドアを押し開けると、安っぽいジャズと、
誰かが吐き出した過去の匂いが混じり合っていた。
カウンターの隅、止まり木に腰を下ろし、
指先で氷を転がす。「春の星屑を、一杯」
冗談のつもりで頼んだが、
バーテンは眉ひとつ動かさず、
琥珀色の液体をショットグラスに注いだ。グラスの底で、砕かれたクラッシュア...
夜風が少しだけ、湿った土の匂いを運んできた。
冬の残党が吐き捨てた最後の溜息に、
微かな甘い毒が混じる。
それを世間は「春」と呼ぶらしいが、
俺の肺には、ただ重く沈殿するだけだ。見上げれば、都会の煤に汚れた夜空。
輝きを忘れた星どもが、
砕け散った硝子の破片のようにバラ撒かれている。
「星屑」なんて...