硝子(がらす)のなみだ
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/06/03 00:38:11
一
ともしびを消した 夜のまどべに
ただひとつ残る 星のまたたき
それは僕たちが いつか失くした
あまくて せつない 約束のいろおまへの頬を つたふなみだは
月のひかりの くだける破片(かけら)
かなしみはただ うつくしく透き
よごれた世界を あらはしてゆく二
もう呼びあふ こゑも途絶えて
風はあや...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
一
ともしびを消した 夜のまどべに
ただひとつ残る 星のまたたき
それは僕たちが いつか失くした
あまくて せつない 約束のいろおまへの頬を つたふなみだは
月のひかりの くだける破片(かけら)
かなしみはただ うつくしく透き
よごれた世界を あらはしてゆく二
もう呼びあふ こゑも途絶えて
風はあや...
一
だれも知らないみどりの森の
しづかな夜の ひかりのしづく
梢をぬらして あふれるものは
むかし僕たちがわすれた歌だおまへの髪に 月光(つきかげ)がふり
やさしい指が ともしびを消す
そのときかすかに 風のひびきが
ぼくらのまはりで 輪を踊るだらう二
青いあざみの しをれる蔭に
あまたの星の また...
窓の外、紫陽花が泥にまみれて泣いている。
今年最初の招かれざる客が、南の海から這い上がってきた。
気象台の連中はそれを「台風」と呼び、俺はただの「厄介ごと」と呼ぶ。
湿った風が、ビルの隙間で錆びたナイフのように口笛を吹いていた。バーボンのグラスに、生ぬるい結露が滴る。
六月の雨は、いつだって余計な記...
雪の白ではない。
それは、すべてを拒絶し、すべてを反射する「無」の色。
中世の裁断を引き継いだこの白いスーツは、
肉体という枷を縛り上げる、優雅な拘束衣だ。
袖を通すたびに、問いが生まれる。
「俺がこの服を着ているのか、それともこの白が、俺という形を繋ぎ止めているのか」
重厚なラペルは沈黙を守り、
...
窓辺にのこされた 淡いパステルのきれはし
それはいつかの あかるい五月の雲の色
六月の雨は いま、ガラスの向こうで
小さな涙の雫を いくつもならべている机のすみに眠る 古びたオルゴール
ねじを巻けば かすれた音のつぶが
ひとつ、ふたつと 薄暗い部屋にこぼれて
失われた季節の 遠いひびきを連れてくるそ...