ガラスの森(オルゴールの音色)
- カテゴリ: 自作小説
- 2026/09/13 23:40:15
ガラスの森の奥で ひそかにまわる
錆びついた ちいさなオルゴール
だれの手もふれないのに かなしく狂ひ
かすかなネジの軋みを 風にまぎらすあのひとが好んだ 古いゆめのような調べ
硝子の葉と葉がふれあふ きらめきのなか
もういちどだけ ひびいておくれと
ぼくはつめたい幹に ひたいを寄せるけれど歌は 途...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
ガラスの森の奥で ひそかにまわる
錆びついた ちいさなオルゴール
だれの手もふれないのに かなしく狂ひ
かすかなネジの軋みを 風にまぎらすあのひとが好んだ 古いゆめのような調べ
硝子の葉と葉がふれあふ きらめきのなか
もういちどだけ ひびいておくれと
ぼくはつめたい幹に ひたいを寄せるけれど歌は 途...
あんなにやさしかった あの日々のひとみ
いまは冷たい ガラスの梢に凍りついて
ぼくがいくら その名を呼びかけても
かすかな風の音(ね)となって あせるばかりもう二度と つぼみを開くことのない
透きとおる森の かなしい静けさのなかで
ぼくは失くしたものを ひとつひとつ数へる
それはきらきらと 指のすき...
あやふやな光のしずくが こぼれて
だれもいない小径(こみち)を ひそかに濡らす
そこには冷たい ガラスの梢(こずえ)がしげり
かすかな風のそよぎに さざめいてゐるぼくの失くした言葉は みな
あおい葉裏のきらめきに なって
窓をひらいた あの日の記憶のやうに
いつまでも いつまでも 震へてゐる夕暮れは...
国道沿いのダイナーの窓際、冷え切った珈琲の向こう側で、夜が静かにひび割れていく。
藍色の闇が溶け出し、地平線の境界線がゆっくりと薄紅色のグラデーションに染まり始めていた。ネオンサインがパチパチと頼りない音を立てて消え、代わりに世界が青い光に満たされていく。
夜を徹して走り続けた身体はひどく疲れている...
ヘッドライトの光が、濡れたアスファルトを白く引き裂いていく。
行き先なんて、最初からどこにもなかった。
ただ、この街の澱んだ空気を引き剥がすように、アクセルを踏み込むだけだ。バックミラーに映る街の灯りが、次第に小さく、滲んでいく。
捨ててきた過去も、答えの出ない問いも、すべては加速する夜の闇に置き去...