アスファルトを叩いた夕立が
埃の匂いと一緒に 街を洗い流したはずだっただが 濡れた路面から立ち昇る蒸気は
陽光を浴びて 卑屈なほど美しく揺れる
春陽炎――
雨が残した 最後の悪あがきだ水溜りに映る ネオンの破片
歪んだ極彩色のなかで
俺の輪郭さえも 頼りなく解(ほど)けていく「湿っぽいのは 性に合わ...
アスファルトを叩いた夕立が
埃の匂いと一緒に 街を洗い流したはずだっただが 濡れた路面から立ち昇る蒸気は
陽光を浴びて 卑屈なほど美しく揺れる
春陽炎――
雨が残した 最後の悪あがきだ水溜りに映る ネオンの破片
歪んだ極彩色のなかで
俺の輪郭さえも 頼りなく解(ほど)けていく「湿っぽいのは 性に合わ...
ぬるい風が
アスファルトの熱をさらっていく
街の輪郭が 音もなく揺れはじめる春陽炎――
やつは 嘘つきな目撃者のように
真実の形を あいまいに書き換えるバーボンの残響
昨日までの乾いた後悔
それさえも ゆらめく光の向こう側へ
溶けて消えればいいと 願う自分がいる「現実は いつもここにある」
タバコの...
ネオンの光が途切れる裏路地
湿った風が 静かに通り抜ける
泥にまみれた景色の中で
整いすぎた輪郭だけが 異様に浮き上がっている生まれ持ったその完璧さは
この掃き溜めには あまりに不釣り合いだ
闇に紛れようとしても
月の光が 容赦なくその姿を暴き出してしまう
逃げ場のない スポットライトのように壁に背...
神が気まぐれに引いたラインが
俺の顔の上で 完璧な弧を描いた
それは祝福ではなく
装填されたままの 一発の弾丸だった産声(うぶごえ)を上げた瞬間から
鏡という名の 底なし沼が口を開く
女たちはため息を 銃弾のように撃ち込み
男たちは嫉妬を 安物のウィスキーで流し込む美しさは 時に最大の欠陥だ
磨き上...
街角のスピーカーが吐き出すのは
聞き飽きた「サマータイム」のジャズ・スタンダード
ガーシュウィンの亡霊が
逃げ水の中で気だるそうに踊っているビルの影はナイフの刃先のように鋭く
焼けたアスファルトを切り裂いていた
俺はトレンチコートを脱ぎ捨てたい衝動を
火をつけたばかりのラッキーストライクと一緒に飲み...