Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



まどろみ

忘れていくために

気楽に過ごそうと思った。抱え込んでいたことを少しだけ脇に置いて、風の吹くままに歩いてみる。空は穏やかで、街の音もどこかやさしく聞こえた。
いつもなら気にも留めない景色が、その日は少し違って見えた。木々の揺れる音や、通り過ぎる人の笑い声が心に染みてくる。そうして肩の力が抜けていくうちに、胸の奥に小さな...


カッコつける私と、素の私



カッコつける私が背伸びをする。
その人の気配に、胸の奥がざわつく。
声のトーンが勝手に変わる。
普段の私が知らない私が前に出る。

落ち着け、とカッコつける私が言う。
無理だよ、と素の私は返す。
手汗だけが正直だ。

歩き方がぎこちなくなる。
自然に、自然に、と唱えるほど...


そして蛇口を閉める。

部屋はまた静かになる。

冷蔵庫の音。
遠くを走る終電。
誰にも気づかれない程度の夜。

洗面台の縁に手をついていると、
ふと気づく。

忘れたかったわけではなく、
思い出したかったわけでもないのだと。

古い本に挟まった栞のように、
ただそこに...


マウスウォッシュ

夜更け。

洗面台の灯りだけが、
小さな港みたいに部屋を浮かべている。

透明な液体を口に含む。

規定の三十秒。

そのあいだだけ、
時計は律儀に進むのに、
心の中では何年かが勝手に逆走する。

誰のことだったか、
もう名前も曖昧なのに。

春の匂いとか、
改札の...


バスキンロビンズ

でかい入れ物のアイスを買ってきた。

冷凍庫を開けるたび、
そこにいる。

妙な安心感。

人生にはいろいろある。
税金とか。
人間関係とか。
見なかったことにしたメールとか。

しかし冷凍庫には、
でかいアイスがある。

スプーンを入れる。

一口。

もう一...





Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.