旅先で大きな栗の木を見かけた、たわわに実った栗の果。私は勝手に、あの大きさは丹波の栗でしょう!と思った。それと通りをはさんだ向かいに、私の視線は果物店にそそがれていた。硝子戸を備えた昔ながらの店構えで、奥の壁には柱時計や色褪せた木箱が積み上げられている。 妙になんだか懐かしい気がして、店の前で足を止...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
旅先で大きな栗の木を見かけた、たわわに実った栗の果。私は勝手に、あの大きさは丹波の栗でしょう!と思った。それと通りをはさんだ向かいに、私の視線は果物店にそそがれていた。硝子戸を備えた昔ながらの店構えで、奥の壁には柱時計や色褪せた木箱が積み上げられている。 妙になんだか懐かしい気がして、店の前で足を止...
目に見えない、確かにこれと説明できない。なにか神秘的で、真面目な力を信じているけど。その力が私を認めてくれない限り、あの人は私を好きにならないだろう。
私は、この町が好きだ。夜になるとたくさんの星が見える。夏は涼しい風が吹く。冬はキレイな山が見える。そして、時間がゆっくりと流れている。幼い頃はじめてこの町に来た時、町全体ののんびり加減におどろいた。人の歩く速さも車の走るスピードも、私の住んでいる町とは違っていた。それぞれの年代の人たちが、自分のペー...
あなたは誰と飲みたいだろう、こんな酒があったら。ひとり、それともふたり、いやいや大勢で。ᢱ 紅彗星長い長い夜を静かに過ごしたいと 願う人のために作られた食前酒つまりは夜通しひたすら飲むための酒である だがこの種の酒としては珍しく飲む者を寡黙にさせる酒でどれほどおしゃべりな人でも 言葉を失ってしまう失...
あの子が忘れていった、手紙がテーブルの下に落ちていた。とても大切なもの、すぐにそう思った。ここにあることを。直接、手渡されたものじゃないので。返した方がイイのだろうか? 、きっとまだ家にはついてないはず。深い藍色の封筒、まわりの空気が同じ藍色に変わる。窓の外も藍色に広がっている、しんしんと夕方がその...