寂しさを知っている人は
ドラマを求める
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
大通りに面した窓の外に、
ちらり・ほらり・ほんの少し雪が降っている。
ほとんどは雨だけど、底冷えのする寒さだ。
喫茶店の隅に置いてあるストーブの上で、
焼けたリンゴがジジジッと鳴っている。
マスターと話に夢中ですっかれ忘れていた、
ストーブの脇に置いてある火箸でリンゴをつまむ。
かなりいい焼け具合だ...
釈然としないまま時は過ぎて行きました。
あの洋館を訪れてから、何日も雨が続いています。
仕事に出てもピアノの音が、なんだかくぐもって聞こえます。
首根っこが重く、食欲もない。
私は三日続けて注文の仕事を断ってしまいました、
屋根をぽっぽっと叩く雨音が家じゅうに響いています。
うす曇りの夕方、洗濯物を...
私は調律師、依頼されたピアノのチューニングをいつもわずか一音だけ外しておく。
鍵盤中央のA音、客にはまったく聞き分けられないほどほんのわずかに。
仕事が終わると
「まぁ、新品になったみたい」
客は晴れやかな微笑みで私の手をとろうとする。
そして、ハッとします。
手袋をはずした私の右手には、人差し指と...
社会の流れに逆らって自己を築いていくという作業は、
並み大抵のことではありません。
しかし、
自分自身を見つめず、
確認せず、
社会を絶対視して、
寄らば大樹の陰で、
いかにうまく社会の流れに乗るかのすべを身につけるために青春期を使うのでは、
うまく流れに乗ることは出来ないかもしれない。
いつでも自...