小雨が降る午后、
悪友がアンテナ付の古いラジオを持ってやってきた。
中庭でそのラジオを聴いていると、
隣の家のネロがやってきた。
ネロは灰色のネコだ、
いくぶん気まぐれで呼んでもこちらにはよってはこない。
勝気そうな緑色の目が印象的で、
光沢のある毛並で若い猫だというのはわかる。
悪友がそのネコの気...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
小雨が降る午后、
悪友がアンテナ付の古いラジオを持ってやってきた。
中庭でそのラジオを聴いていると、
隣の家のネロがやってきた。
ネロは灰色のネコだ、
いくぶん気まぐれで呼んでもこちらにはよってはこない。
勝気そうな緑色の目が印象的で、
光沢のある毛並で若い猫だというのはわかる。
悪友がそのネコの気...
昼の眩しさに瞼を伏せ、
もう一度ゆっくりひらく。
涸れた噴水がひとつある、
落ち葉のたまった水盤に鳥の羽があるのを見つけた。
白い縞もようのある淡藍色の羽だ。
私はそれを本の栞にして、
読みかけの頁に挟んだ。
夢のように私たちは生きてここへ来た
時間も涙も苦しみも みんな
遠く霧がかかった辺りにおいてきた
歩いていたのに まだ歩くみたいだ
きっとずっと同じかもしれない
時間なんかおいてこれるはずないじゃないか
涙だって 苦しみなんかもっとさ
夢のように私たちはうちふるえて
夢のように私たちは一...
青いチェックのテーブルクロス。
ひんやりとしたグラスの中のソーダ水。
ストライプ模様のストロー。
五月最後の青空。
空の上からこんにちは、
どこへだっていくよ。
恋に落ちたら終りなんてない。
今日の朝刊に割引券が入っていた。
最近できた水族館のものなのだがちょっと変わっている、
色画用紙に刷った手作り風のもの。
私はその割引券を手にとって掌に乗せた、
ほのかにインクの匂いがする。
文字はスクリプトでアクアリウムと書いてある、
住所をみると街外れのさびれた場所だ。
「こんなところに水族館が...