自作小説倶楽部10月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2025/10/31 22:01:15
『予知夢』
「あの、すいません」声を掛けられて振り向くと僕より頭ふたつ分低い女の子が僕の顔を見つめた。その表情に失望が混じる。「すいません。人違いでした」「ちょっと待って、君、5日ほどこの神社で人を探しているよね」踵を返そうとする少女を呼び止める。「ごめんなさい」「謝らなくていいよ。怒ってない。何か...
『予知夢』
「あの、すいません」声を掛けられて振り向くと僕より頭ふたつ分低い女の子が僕の顔を見つめた。その表情に失望が混じる。「すいません。人違いでした」「ちょっと待って、君、5日ほどこの神社で人を探しているよね」踵を返そうとする少女を呼び止める。「ごめんなさい」「謝らなくていいよ。怒ってない。何か...
『悪魔の盲目』
「初めて彼女を見た時、そこに光があったんだ。薄暗いカフェの片隅でコークを前に彼女は瞳を閉じて音楽に耳を傾けているようだった。金色の前髪が長いまつげに交差して輝いていた。それだけでも目が離せなかったのに、彼女が目を開けると、開けた時は心臓が止まりそうだった。まさか僕を殺せる人間がいるな...
「上階の女神様」
「こんばんわ。最近忙しいですか?」背後から声を掛けられて少し驚いたが振り返ると見知った温和な笑顔があった。同時にここ数日の帰宅時間が遅いことを言われたのだと気付く。有紀子は笑顔を作り応じる。「時期的なものです。何か連絡はありますか?」相手はマンションの管理人だけあって白髪もきちんと...
『転換星』
「反省することなんて無いんだよ! 俺は人助けをしたんだ! それなのに反省文なんて、」平和で平凡な高校の昼休み。和気あいあいと青春の会話と食欲を楽しむ生徒の中で一人だけ叫び声を上げた者がいた。振り返らなくてもそれが誰かわかっている。平々凡々な容姿に学力体力その他も平均的な能力、佐藤という名...
『夢の図書館』
二人の男がその図書館を訪れた。前を歩くのはステッキを使う老人でやや猫背気味だった。後ろの青年は老人に歩調を合わせている。「変わらないな。ここだけは時間が止まっているようだ」老人は巨大な書架やわずかな明かり取りの窓を見上げて思わずつぶやいた。「先生の研究の基礎がここで築かれたのだと思う...
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