三姉妹 ②旅の途中で
- カテゴリ: 自作小説
- 2022/07/03 22:12:26
目の前に差し出されたのは、特別な飾りも艶出しもない、素朴なタルトだった。なのに、素の色には濁りがなく、上のりんごとサツマイモには繊維が残っていて食べ応えがあり、下にいくほど舌触りがしっとりと滑らかになる……。生真面目と言ってもいいほど、丁寧に丁寧に作られているのが、素人に...
ロワ診断:カテゴリ・ファッション。ネコ診断:占い。光光関連:グルメ。その他診断:主に占い(カテゴリ修正中)
目の前に差し出されたのは、特別な飾りも艶出しもない、素朴なタルトだった。なのに、素の色には濁りがなく、上のりんごとサツマイモには繊維が残っていて食べ応えがあり、下にいくほど舌触りがしっとりと滑らかになる……。生真面目と言ってもいいほど、丁寧に丁寧に作られているのが、素人に...
深い森を抜け、ふいに視界が開けた場所に、懐かしい館が建っていた。その館の扉の前に、大きな鞄を無造作に置いて鍵を開け、イーシスは一見、何もない空間に語りかけた。
「オバケちゃん、ただいま~。姉様とディーは帰ってきてるぅ? 二人ともまだ?」
自室の窓を開け風を通し、鞄を開けている間。壁をすり抜け入ってき...
前編はこちら ↓ 旧題は 黒背景(緋金バージョン)https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=70457831
(やべぇ~想像以上のイケメンだ)
見合い相手の青年を紹介され、緋金の言葉遣いはイッキに崩れた。内心で。...
「ついに緋金も嫁に行くのかぁ」「行くわけなかろう」
護神・渢刃がふともらした一言を、珍しく和服に身を包み、四苦八苦しながら帯を締めていた緋金が一刀両断、切り捨てた。
「見合いするんだろう?」「上司のゴリ押しだ」「だったらフツー、決まりじゃねぇの? お前も後ちょっとで三十路だしぃ」
そんなに私を嫁に行...
泉のかたわら、木々の隙間を縫うように、細い風が常に通り抜ける場があった。新緑に隠れるように、さして大きくもない東屋が置かれている。《なぎ》はそこで月を見ていた。
「眠れぬのか?」
今出川翠巒のふいの訪いに、《なぎ》は特に驚くこともなく問えば、やや間をおいて翠巒は首肯する。座したまま静かに「なれば眠ろ...
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