ファイヤーエムプレスローズ 10
- カテゴリ: 自作小説
- 2025/01/01 21:25:24
女帝が思い出を語り始めます。「あの国では蓮が国花となっているだけあって、蓮の花も根も茎も実も、すべて食べたり飲んだり、繊維を使ったり、余さず利用するのじゃ。年に一度、蓮の女神に蓮の花を捧げる祭りがあってな、王族の女性が蓮沼に入って、一番美しいと思った花を取ってくるのじゃ。母上は何度もその祭りで花を...
女帝が思い出を語り始めます。「あの国では蓮が国花となっているだけあって、蓮の花も根も茎も実も、すべて食べたり飲んだり、繊維を使ったり、余さず利用するのじゃ。年に一度、蓮の女神に蓮の花を捧げる祭りがあってな、王族の女性が蓮沼に入って、一番美しいと思った花を取ってくるのじゃ。母上は何度もその祭りで花を...
中の国の王子は、緊張していました。女帝が間もなくこの塔を訪問するとの知らせがあったのです。 王子は数日前、この城に連れて来られた時のことを思い出しました。
謁見の間には各国の大使や商人など大勢居ましたが、中の国の王子の到着が告げられると、人々は彼に道を開けました。王子が女帝の前まで進むと、一段高い...
綿の国の王と中の国の王子は、薔薇の国の軍の前に進み出ました。 王は跪いて言いました。 「私の民を傷つけないで欲しい。私ができることなら何でもしよう」続いて王子が、地面に這い蹲って言いました。「私の部下の命をお救いください。その為なら、私の首も喜んで差し出します」「貴国の民には手出しはしませぬ。また...
爺やといえば小さい頃、お姉さまたちと庭仕事をしたことがあったっけ、と、末の姫は思い出しました。 薔薇の国においては、音楽や乗馬などと並んで、園芸も貴族の趣味の一つとされています。貴族の子弟は成人するまでに一通りの基礎を身に着けておくべきとされているので、庭師の地位は、学問や教養の師と同じような位置...
石の国の捕虜の兵士たちは、困惑していました。 捕虜生活というものは、もっと寒くてひもじくて過酷なものではないのか、と。 暖かく快適な部屋に寝具に食事、飢える心配も凍える恐れもなく、そのうえ働く必要もないなんて、心配しているだろう故国の家族に申し訳ない気持ちでいっぱいです。収監されている場所さえ地...