【小説】紫翼のジーナ~21~
- カテゴリ: 自作小説
- 2012/03/28 14:34:33
『紫翼のジーナ』9話
原案:はじめあき
作者:しゅーひ
馬に繋がれた荷台がガタゴトと一定の間隔で振動している。
その荷台には黒髪の若い男が寝そべっていた。寝ている時だけは整った素顔を見せる男である。
顔をあわせると何かと口喧嘩をしている時との顔とあまりにもかけ離れた鼻筋の通った顔が、またかえって腹...
『紫翼のジーナ』9話
原案:はじめあき
作者:しゅーひ
馬に繋がれた荷台がガタゴトと一定の間隔で振動している。
その荷台には黒髪の若い男が寝そべっていた。寝ている時だけは整った素顔を見せる男である。
顔をあわせると何かと口喧嘩をしている時との顔とあまりにもかけ離れた鼻筋の通った顔が、またかえって腹...
「この時期はもう随分と暖かくなってきたね」
まっすぐ前を見ながら彼女がつぶやいた。
花見にはまだ早いこんな時期に、志穂と一緒に夜の散歩に出かける。
冬将軍の猛威もだいぶ過ぎ去り、冬の間に使っていたマフラーをしまってもいい頃だ。
それでも、つないだ手の温もりを離したいとは思わない。
「ねえ、あっくん...
彼女の第一印象は僕にとってはあまり良いものではなかった。
入社後の配属先は、わが社でも花形部署と言われているところであった。
社内での少しくらいの融通はごり押し出来るような部署である。
ある日、ひとりの女性が部署にやってきた。
『松本さんってどなたですか?』
女性にしては、少し低めだが張りのある...
照りつけるような夏の日差しがアスファルトを容赦なく焼いている。
海岸沿いの緩やかな坂道を自転車をこぐ俺の体は厳しい日差しと照り返しによる熱ですでに汗でいっぱいだ。
『あちぃ・・・』
朝から何度も口から漏れる言葉だか、言わずにはいられない。
車もあまり通らないこの道に陽炎が立ち上り、むせ返すような...
『紫翼のジーナ』8-②話
原案:はじめあき
作者:しゅーひ
過ぎ去った2年間に何度も謁見(えっけん)を申し立てた。
正規なルートや裏工作のような事までした。
しかし、未だにメロアは叔父である弟王に会うことを許されなかった。
ことごとく、事前でガロンに先手を打たれてしまっていたのだ。
その間、民...