Nicotto Town



自作小説倶楽部11月投稿

『男運』
「それで、私に何の用かしら?」彼女はテーブルやソファに汚れが無いか確かめ、染み一つないような白い手袋の手首のあたりをいじりながら僕に尋ねた。話をするためファミレスに誘うと、「そんなところ」と不快な顔をされた。実家が金持ちで、大学に通うのにマンション一部屋とお手伝いさんが与えられる身分だから...

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自作小説倶楽部10月投稿

『恐怖が生きる町』
帽子とコートで土砂降りの雨を潜り抜けた俺はようやく目当ての建物を見つけると玄関前の短い階段を駆け上がり遠慮なく扉を叩いた。やがて住民が動く気配がして明かりがともる。「どなた?」そっと扉の隙間から女が問う。「泊めて欲しいんです。このままでは雨の中で凍え死んでしまう」俺は声を張り上げ...

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自作小説倶楽部9月投稿

『不幸な死神』
最悪だ。私は己の不幸を嘆く。同時に「期日が近いから今夜済ませちゃって。大丈夫。台風は逸れるよ」と指示したブラックな上司の笑顔を十数発殴る想像をした。非常階段から目立たず立ち去るべきなのに非常口を開けると暴力そのものの雨と風が襲い掛かってきた。非常階段を徒歩で降りることはティラノサウル...

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自作小説倶楽部8月投稿

『天使の思い出』
失礼。つい見とれてしまったわ。噂通りお綺麗ね。隣に座っていい? 少しあなたとお話がしたいのよ。そんなに警戒しないで。私はただの看護婦よ、今夜は仕事も休みで夫も息子も留守だから外食しようとこの店に入ったの。運が良いわ。あなたとお話しなくてはならないと思っていたのよ。よく公園通りを散歩...

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自作小説倶楽部7月投稿

『魔法円のある図書館』
歓声と人が走る音に私はページから視線を上げた。遠い場所から聞こえて来るような響きに不安を覚え、周囲を見渡す。私をぐるりと取り囲む書架の隙間に何かが見えたような気がしたが、私の足は動かなかった。ページに目を戻す。余計なことに煩わされるより楽しい物語を読んでいたい。そう思って読書...

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