仮想劇場『猜疑心ブレイブ』
- カテゴリ: 自作小説
- 2022/04/17 07:36:06
たとえば、信じていた大事な大事な人に心無い言葉を浴びせられたとして、その日を境にその人の事を疑ってしまうようになったのなら、僕はトコトンその人を疑うようにしている。 そのほうが無理に自分を諫めるよりはずっと素直だと思うし、何よりその人の事をもっと深く知れる機会になるだろう。結果的にその大切な人を...
たとえば、信じていた大事な大事な人に心無い言葉を浴びせられたとして、その日を境にその人の事を疑ってしまうようになったのなら、僕はトコトンその人を疑うようにしている。 そのほうが無理に自分を諫めるよりはずっと素直だと思うし、何よりその人の事をもっと深く知れる機会になるだろう。結果的にその大切な人を...
夕間暮れの空の下で一人佇む幸せがあるように、絶え間ない雑踏の中にあって誰彼構わず愛想を振りまく幸せだってあっていい。 ああじゃなきゃいけないだとか、こうじゃなきゃダメだとか決めつける前に、一度だけ自分をその場所に放り棄てて心の在り場所だけでも掴んでみようと試みてはどうだろうか。
孤独を恐れる人...
「いい塩梅で年を治めて今日を迎えた事を切にありがたく思うよ」 キミはそう言って窓辺に立つと喫茶店の下を疎らに歩く人々を優しい目で見下した。【自分は特別だ】とか【無能は不要だ】とかいったイタい言葉をすぐ口にするキミにしては、やけに殊勝な呟きだなと思って僕は思わず天井を見上げフと笑った。
2022...
小さく息を吐きながら彼女の訪問をただ待つ。 時計の秒針がキリキリと油の抜けた音を刻んでいる。 呼び出しのベルは鳴らせない。それでも通知は常にONだ。
僕にかけられた制限は僕自身の罪が作り出したもの。 そこに異論を唱えるほうが不自然だから黙ってそれに従っている。 人生の大半を不自由の中で果敢に過...
「死にたい」と呟いて川面を見つめて、そっと目を閉じ悔し涙を落とした。 川底から伸びる無数の慈悲深い負け組の手に身を委ね、キミは一度だけ空を見上げそのままの姿勢でダイブした。
「なんのために」と僕が言った。「誰の所為で」とも確かに言った。 誰も答えてはくれなかったが不満に届くほど辛辣にもなれない。 ...