Nicotto Town


ごま塩ニシン


夜霧の巷(37)

 ビジネス手帳の文字を菅原は指差して質問した。「ここに信太盛太郎という名前が出ているでしょう。この方のことについて、何か、お話をお聞き出来たらと思って、突然ですが、訪ねて来たのです。」「もう、昔のことですし、何も覚えておりませんわ。昨年、正信さんの7回忌をされたのでしたら、もう8年も前になりますね。...

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夜霧の巷(36)

 エレベーターのドアが開くと、そこはクラブ夕霧の玄関になっていた。一坪ほどのスペースだが、大きな壺に花が投げ込むように活けてあった。靴底が沈むような絨毯が敷かれていた。部屋から掃除機の音が響いていた。「突然、お邪魔します。」 菅原は大きな声で呼んだ。反応するように掃除機の音が止まった。北川美佐が出て...

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夜霧の巷(35)

 叔母の陽子は夫のビジネス手帳なんかに微塵の興味を示さなかった。菅原はわざわざ手帳を開いて、最後のページを伯母に見せた。「私ね。正信の仕事のことには関心がないのよ。スナックやバー、クラブなんか一度も行ったことないわ。アルコール類は飲めないでしょう。それに正信のしている仕事だから、いつも距離をおいてい...

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夜霧の巷(34)

 伯父の故早水正信は病で倒れる直前、どんなことを考えていたのだろうか。菅原に興味が湧いた。途中から抜き出したビジネス手帳を元に戻して、7年前の最後の手帳を改めて開いてみた。『新陽建設が長年にわたって開発してきた新栄街区も6号レジャービルの完成で一応の区切りがついた。テナントも落成式を待たずに、すべて...

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夜霧の巷(33)

 夕刻、菅原が伯母の家に帰ると、早水陽子から二日後の土曜日に遺品整理の業者が来てくれることになった。もし、慎一郎が欲しいと思う物があるなら、残しておくので亡くなった早水正信の書斎を調べておくようにと言われた。そういえば、昨年、故早水正信の七回忌をすませた。伯母は、子供がいないので老後の一人暮らし対策...

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