『精霊の世界、星の記憶』 第7話「風の精霊」①
- カテゴリ: 自作小説
- 2011/05/16 20:48:38
第二章 アプリコットの野
「風の精霊」
紅い花、黄色い花、青い花、紫色の花……と、お花畑には何種類ものいろいろな花が、美しく可憐に咲いていた。星史は二日間、シルビアと歌を歌ったり、時々休みながら歩いてきた。皮のようになめらかなスエードの葉の袋の水は、もう少なくなっていた...
第二章 アプリコットの野
「風の精霊」
紅い花、黄色い花、青い花、紫色の花……と、お花畑には何種類ものいろいろな花が、美しく可憐に咲いていた。星史は二日間、シルビアと歌を歌ったり、時々休みながら歩いてきた。皮のようになめらかなスエードの葉の袋の水は、もう少なくなっていた...
星史は恥ずかしくなって、耳までぽっと赤く染めた。「セイジ、それ、英語の歌よね?!」「うん、そうだよ」「何だか、すごく楽しい歌ね!」「うん、そうだね……」と言いながら、星史はお母さんが言っていた言葉を思い出した。「お母さんがね、『哀しいときやつらいときは、楽しいことを考えま...
「花たちの歌」
星史は貫けるような真っ青な空を時々見上げなら、シルビアと永遠に続くと思われるようなお花畑を歩いていた。太陽の光があちこちに自由に飛びまわっていて、花たちが時々すごくまぶしく見えた。なめらかな風が花たちに時々吹き、花たちは嬉しそうにゆれている。そして、優しく温かい、楽しそうな歌を歌っ...
「これ、セイジのよ」「ぼくの?」「うん、セイジの。スエードの葉で編んだ方の袋にはお水、ピシャの葉で編んだ方の袋には木の実が入っているの」星史は二つの巾着袋をシルビアから受け取りながら、重い方の袋を上下にゆらし、「こっちがお水だね」とシルビアに聞いた。「ええ、そうよ」とシルビアは微笑んで答えた。「セイ...
星史はシルビアの言葉にうなづいたものの、その場にひとり残されて、どうしたらいいかわからなかった。見知らない世界にひとりぽつんといると、何だか無性に淋しくなってきた。――ただ待っているだけじゃ、何だか落ち着かないなぁ。と思い星史は「あー」と発声してみた。そして、語るように何かをぶつぶつ言い始め、それ...