Nicotto Town



交響曲第5番

祐作はコートを枕にすると、桜の木の下に寝転んだ。川べりは寒いと思ったが、風もなく、上着を脱ぎワイシャツ姿が丁度いいくらいの陽気だった。腕時計を見ると13時30分。花見が始まるまで、5時間近く時間をつぶさなければいけない。

川にしなだれかかる桜は満開で、多くの人が桜を見ながら歩いていた。川に沿った芝...

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悪だくみ

就業時間が終わる5時半になると、机が隣の法子は、すくっと立ち上がると「お先に失礼します。」と周りに声をかけて帰宅した。携帯用のアプリを開発している会社で、早くリリースをしなければ、せっかく作ったアプリが陳腐化してしまう。仕事は時間との勝負で残業が当たり前のような職場の中、毎日、定時で帰る法子は目立っ...

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歩きスマホ

神保町にある雑居ビルの建て替え工事が進めらていた。春雄は、そのビルの現場で日雇いの交通誘導員をしていた。工事現場の出入り口で一時停車した工事車両の運転手に出発の合図を送っていた。

2か月前に健康食品を販売する会社を辞めた。オクラパウダーが入ったグミやお茶の通信販売をしていた。全国各地で健康相談会を...

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飛梅

東京駅に着き北陸新幹線から降りると、22時を過ぎていた。自宅のある北千住とは反対の方向にある新橋のスナックに向かった。クラブはホステスが客の隣で接客をするが、スナックは、ママやバーテンがカウンターの中で接客をする。

クラブは風営法の規制で24時には閉店するが、スナックは届け出をすれば24時以降も営...

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金平糖

時は、天正10年5月、近江坂本城の一室で、明智光秀は、丹後細川家から届いた一通の書状を読みながら、頭を抱えていた。『パパ、もうだめ、我慢できない。別れる。坂本に帰っていいでしょ。旦那のやきもちに付き合いきれないわ。昨日なんて、ちょっと話をしただけなのに、呉服屋の番頭が百叩きにされちゃったわ。金平糖を...

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