「契約の龍」(93)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/08/12 15:14:17
国王の「静養休暇」が、ただの口実ではなかった事を知らされたのは、学院へ戻って数日が過ぎてからの事だった。休暇に先立つ数日前、執務中に倒れた為、定まった行事が予定されていない今、静養休暇をとった、という事だ。
その情報がもたらされたのが、学長からだけでなかった、という事は…&hell...
ぶろぐ、の、ようなもの。
国王の「静養休暇」が、ただの口実ではなかった事を知らされたのは、学院へ戻って数日が過ぎてからの事だった。休暇に先立つ数日前、執務中に倒れた為、定まった行事が予定されていない今、静養休暇をとった、という事だ。
その情報がもたらされたのが、学長からだけでなかった、という事は…&hell...
呪陣の間への入り口は、祠の奥に接している岩壁にあった。四角く囲った枠の中に、「開扉」の呪文を書き込んだだけの、シンプル極まりないもので、その呪文も、明らかに素人が描いた――書いた、ではなく、何かのお手本を丸写ししただけ――と判る、たどたどしいものだった。枠の四隅が浅く穿ってあるのは、目印なのだろう...
それは、その広くもない空間一杯にわだかまっていた。
明かりの色が青に傾いているせいで定かではないが、時折差し込む白色光の下で見ると、それは鮮やかな赤い色をしているように見える。
もう少し良く見ようと思って、「明り」を灯す。
それの表面を覆っているのは、鮮やかな赤い鱗だが、その形は、&hell...
「さっきから誰だったか思い出そうとしていたのだが…そうか、そういえば貴公は………此度の事、残念であったな。…いや…その場に遭遇していたのであったな、そういえば」
「ああ…いえ…私がちゃ...
「…それでは、余計にお断りできませんわね。…今からお伺いしますの?」
「近い、とは言ったが、街中にあるわけではないのでな、その入り口は。妙齢の愛娘を、そんな物騒なとこに連れ出すわけにはいかない」
「お言葉を返すようですが、私の育った所は、ここよりもはるかに田舎なんで...