「契約の龍」(98)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/08/19 13:55:49
正面から見る王宮は、通用門から見るよりも、はるかに壮麗だった。殊に、今は、冬至祭のための飾り付けで、細かい装飾があちこちに見られて、昼の光の下では、可憐な趣もある。
「…で、なんで今日は正面からなんだ?」
「そりゃ、正式な招待客だもの。通用口から入る訳には」
「…...
ぶろぐ、の、ようなもの。
正面から見る王宮は、通用門から見るよりも、はるかに壮麗だった。殊に、今は、冬至祭のための飾り付けで、細かい装飾があちこちに見られて、昼の光の下では、可憐な趣もある。
「…で、なんで今日は正面からなんだ?」
「そりゃ、正式な招待客だもの。通用口から入る訳には」
「…...
冬至祭の前日。めっきり人が少なくなった学院の前に、あまり目にしない儀礼用の車が停まった。
「…何であんなのを寄越すんだ?目立ちすぎないか?いくら早朝とはいえ…」
学長の家の窓からそれを目にしたクリスが、うんざりしたような口調で言う。
「でも、車を牽いているのは普通...
夕食の間に雨が降り出したらしい。雨具の用意がないのと、足元が危ないのとで、寮には戻らず、こちら――学長の家の方――に泊まる事になった。試着が一日では終わらなかったので、次の日も結局ここに来る事になってはいたのだが。
「……クリス」
用意された部屋に入ろうとするクリス...
「…それでね、くるっとまわるとね、スカートがふわって広がってね、…すっごくきれいなの!」
夕食時、セシリアがやや興奮気味に試着時の様子を学長に語って聞かせる。学長は今日一日、所用で外出していたので。
「ふうん。…それは本番が楽しみだね。君の母上は、そう...
冬至祭は、冬至の日を挟んで前後一週間ずつの十五日に渡る行事だ。…基本的には。
だが、祭りの準備、というものには、常に浮足立ったものが付いて回り、気が早い者は、夏至の日が過ぎたら、それほどでもなくてもひと月ほど前になると、冬至祭の準備に取り掛かるのが常だ。
年が明ければ試験が待ち構...