『精霊の世界、星の記憶』第10話「ローズ~」①
- カテゴリ: 自作小説
- 2011/06/21 21:54:11
第二章 アプリコットの野
「ローズ・フローラの歌」
美しくやわらかい薔薇の花の雨を、星史たち三人はしばらく受けていた。薔薇の花びらが一枚、テーブルの上のカップに落ちていく。ローズ・フローラはやさしく微笑んで、両手を胸にあてた。「消えてしまっても、あの人の思いは消えない」と精霊の言葉でぽつりと言っ...
第二章 アプリコットの野
「ローズ・フローラの歌」
美しくやわらかい薔薇の花の雨を、星史たち三人はしばらく受けていた。薔薇の花びらが一枚、テーブルの上のカップに落ちていく。ローズ・フローラはやさしく微笑んで、両手を胸にあてた。「消えてしまっても、あの人の思いは消えない」と精霊の言葉でぽつりと言っ...
星史とシルビアは、黙ったままローズ・フローラの次の言葉を待っていた。「森を削ったら、そこに生きていた木々を殺すのよ。木々だけでなく、草や虫、鳥たちも……。木々は空気をきれいにしたり、酸素を作ってくれているのにね。魚の住めない湖、川で家をなくした魚たち、川の流れは速かったり...
第二章 アプリコットの野
「薔薇の花の雨」
小高い岩からふわりと花びらが舞い散るようにスカートを広げて、ローズ・フローラは星史たちの前に舞い降りた。「人間に殺されたって……」と星史は、何か心に沈んでいくものを感じながらつぶやいた。「そうよ、殺されたの。あなた人間でしょう?...
第二章 アプリコットの野
「花の精霊」
シルビアはそのままうつむいて、しばらく静かに目を閉じていた。砂金のように美しい髪が、ぱらぱらと背から肩の方へ流れるようにこぼれていった。星史は何か変なことを聞いてしまったのかと、気まずい感じを覚えた。シルビアに何か言おうと星史は必死に言葉を探した。そうあれこれ...
星史は急すぎて「えっ?」と訳がわからなかったが、なめらかで心地よい風が、グルグルグルっと渦を巻き始めた。そして風がもとの穏やかな線をなめらかに描き流れ出すと、絹のように美しく長い銀色の髪をした少女がそこに立っていた。その少女の瞳の色は、アメジストのような紫色だった。目が合ったとたん、星史はその瞳に吸...