霧の鷹留城と矢背負稲荷【その2.1】
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/12/04 01:13:09
2.1
時が経ち私は森の家へ帰って来た。
「母さん、私はどうしてしまったのでしょう? 人の子が愛おしくてならないのです」
「そうなの、それは貴女にもその時が来たのですよ、私たち白狐の定め時が」
榛名山は神の山と崇められ、そこに生きる者の内には神の力を宿しその使いが選ばれた。
白蛇や白狐など白く...
自分の思った事、感じたままを人に伝える事って実は難しい。「なにそんなんで感動するわけ?」って事が往々にして起こりうるからだ。
2.1
時が経ち私は森の家へ帰って来た。
「母さん、私はどうしてしまったのでしょう? 人の子が愛おしくてならないのです」
「そうなの、それは貴女にもその時が来たのですよ、私たち白狐の定め時が」
榛名山は神の山と崇められ、そこに生きる者の内には神の力を宿しその使いが選ばれた。
白蛇や白狐など白く...
いずれ一人身
どうせ死ぬときは一人って言うよね。
前から思っていたことだが、死んじまう事がまじかに迫った時。
見るも無残な醜態で、日々悶絶するに違いないと思う、もちろん私のことね。
そんな姿は、かみさんを始め家族には、出来るだけさらしたくないと思っていた。
本当はすがりついて、泣きついて助けてほしい...
近くのマーケット
いつものマーケットへ行ってきた。
閉店まぎわの半額セールが目当てだ。
もう半月以上前から寄っているのでパターンは読めてきた。
100円前後で買えるお惣菜をいくつか買って、うどんの具にするのだ。私の食器はレンジに入れてふたが出来ると言うタッパーなのです。
それとコップ...
彼の住む集落は、大久保の里から沢が榛名山に向けて伸びる谷津にあった。
谷津から東へ向けて斜面を登ると中腹に社があり、脇を通り抜けて更に登ると鷹留城の大手門へ通じている。谷津を南に降り出口の西側の高台には、砦が築かれてその本廓には鷹留城守将の一人石井讃岐守が館を構えていた。これは鷹留城の守りを固め...
1.1
梅が薄紅色のつぼみを膨らませると、野山は柔らかな光に当てられて輝きを増している。私はその時、野ネズミなどの小動物が土から這い出して来た虫を目当てに、嗅ぎまわるのを眺めていた。
すると里から沢伝いにの少年がやって来た。蓬色の直垂に袴姿で、髪は長く馬のしっぽのように後ろで束ねている。脇差...