菅原は、伯母の視線が自分に向いていないことに気づいた。早水陽子は故意に知らぬふりをしているだけではないのか。菅原は伯母に対して疑惑を持った。「慎一郎さんは、一体何を知りたがっているのよ。その植村雪枝という人に興味があるの。」 伯母の声のトーンが跳ね上がった。「以前、運河で水死体で発見された人、あの...
菅原は、伯母の視線が自分に向いていないことに気づいた。早水陽子は故意に知らぬふりをしているだけではないのか。菅原は伯母に対して疑惑を持った。「慎一郎さんは、一体何を知りたがっているのよ。その植村雪枝という人に興味があるの。」 伯母の声のトーンが跳ね上がった。「以前、運河で水死体で発見された人、あの...
掃除機の騒音で菅原は目覚めた。階下の居間へ降りていくと伯母が掃除機の電源を切って、訊いてきた。「慎一郎さん。昨日はどこで呑んできたの。大分、酔っぱらっていたけど。」「亡くなった伯父さんが、元気な時に建てたレジャービルのテナントさんでクラブ夜霧というところ。」「フーン。私は知らない。あなたもクラブへ...
クラブ霧笛に行くと美佐の振る舞いといい、従業員の青年の態度がガラッと豹変していた。ママの雪枝に繋がる大切なお客さんとでも思っているのかもしれない。菅原は美佐の振る舞いに暖かさを感じた。「テーブル席だと仰々しいので、水沢さん。カウンターの席にきてよ。ここなら話しながら仕事も出るし。菅原さんも、どうぞ...
美佐が居なくなって、雪枝は気が楽になったのか。それとも、過去の自分の生きざまを誰かに聞いてもらいたくなったのか、郷愁を誘う表情をして菅原慎一郎に声をかけた。「菅原さん。あなたの伯父さんの早水正信さんには大変、お世話になったわ。何の恩返しもできない内に亡くなられて、本当に残念ですわ。何か、お役に立て...
「初めまして、菅原慎一郎です。現在は、伯母にあたる早水家で居候しております。実は、伯母が亡くなった伯父、正信さんの遺品整理を手伝えというものですから、伯父が残した日記を整理しておりましたら、クラブ霧笛の植村雪枝さんのことが書かれていたものですから、一度、お会いして、最近、亡くなられた信太盛太郎のこと...
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