緊急事態宣言が出てから、テレワークを続けていたが、今日は、4日ぶりの出勤日だった。幸太郎は、駅まで歩いていく途中、家々の庭に咲く花を見ながら、閉じこもっているより外に出た方が気持ちがいいと思った。
最初は、戸惑ったテレワークも慣れてくると、楽でいいと思うようになった。いつもなら、上司に資料を提出す...
緊急事態宣言が出てから、テレワークを続けていたが、今日は、4日ぶりの出勤日だった。幸太郎は、駅まで歩いていく途中、家々の庭に咲く花を見ながら、閉じこもっているより外に出た方が気持ちがいいと思った。
最初は、戸惑ったテレワークも慣れてくると、楽でいいと思うようになった。いつもなら、上司に資料を提出す...
枕元の目覚まし時計が、けたたましく鳴った。日曜日の午前7時。もう少し寝ていたいが、手を伸ばして、アラームを止めた。隣で寝ていた妻が、ふとんをめくりながら、「おめさ、おんどがったけ?」と言った。妻は、いつまでたっても津軽弁が抜けない。妻は、「だば、やーやど、マスク、買ってきてけれ」と言うと、また、布団...
勇作は、小さな公園のベンチにかす美と並んで座っていた。二人は、かす美が作ったサンドイッチをを頬張りながら、公園の片隅に植えられた桜を眺めていた。春の日差しを浴びて、淡いピンクの花びらが輝いていた。
勇作とかす美は、経済学部の男子と文学部の女子が参加した合コンで知り合った。他のメンバーは、お酒も入り...
希実子が「ただいま~」と言いながら、リビングに入ってきた。テレビを見ていた美咲が「おかえり~」と言った。健介は、腰をさすりながら、炬燵から立ち上がると、「おかえり」と言って、キッチンに向かった。
サラダは作ってあった。鶏ガラスープに醤油、酒、ごま油、オイスターソースを入れてひと煮たち。水溶き片栗粉...
打合せが終わり、訪問先のビルを出ると小雨がパラついていた。傘を持ってこなかったので、近くの喫茶店で雨宿りをすることにした。店内には観葉植物が飾られ、革張りの椅子と無垢の木のテーブル、その上には灰皿が置かれ、昭和の香りを色濃く漂っていた。
マスターに深煎りモカを頼み、煙草に火をつけた。鞄から本を取り...