Nicotto Town


ごま塩ニシン


おすがり地蔵尊秘話(5)

 秀子の弟から電話があって以来、妻から連絡がパタッと途絶えてしまった。娘の優子からも電話がかかってこない。あっという間に1か月が経過してしまった。私はスーパーやコンビニで買ってくる弁当生活を続けていた。小説を書くことは進捗したかといえば、これも筆が進んでいない。ある午後に去年、妻をガンで亡くしたとい...

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おすがり地蔵尊秘話(4)

 妻が娘の家に行ってから2日後、秀子の弟から電話がかかってきた。一瞬、夫婦喧嘩の仲裁かと思ったら、違った。
「姉さんに至急に連絡を取りたいのです。」
 娘の連絡先を教える前に、義弟が、緊急だという話の内容を知りたくなって、私は余裕を持って、問い質した。
「娘の家に骨休めに行ってるのだが、緊急って、何...

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おすがり地蔵尊秘話(3)

「もうね。あなたには愛想がつきたわ。しばらくの間、優子の家に行って相談してきます、食事なんかも勝手にしてください。何かと言えば、小説、小説といって何年暮らしてきたのですか。いい加減にしてほしいわ。まとまりもしない文章を書いては紙屑を作って。おまけに私が殺されでもしたら、こんな不幸ってないでしょう。も...

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おすがり地蔵尊秘話(2)

 散歩から帰ってくると、キッチンにいた妻の秀子が来てくれと言う。私は2階の書斎へ階段を上がりかけていたが、振り返って妻の顔を見た。表情がいつもと違って険しい雰囲気である。だいたい、私のことを軽く見下しているから、表情が曇り空であっても、普段のことだから特に驚くことはない。
「何か。」
 私は気楽な気...

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おすがり地蔵尊秘話(1)

 私は推理小説を書きたいと思った。推理小説というのは、結局のところ人をどのように殺すのか、その殺害方法と犯人の探索がテーマになると考えるが、凶器とか暴力によって人を殺害するという凶悪なことは、自分の性格からして、とうてい容認できない。そんな怖いことはできない。それでは、どうすればいいのだろうか。毒殺...

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