Nicotto Town



自作小説倶楽部7月投稿

『黄金の砂漠の夢』

あれは1943年の夏のことでした。私は16歳で照り付ける太陽の下、青い海原を前に絶望していました。少し前まで使命に燃えた一等水兵だったというのに。私が乗り込んだ巡洋艦はあっけなく敵の潜水艦に撃沈されてしまい。下っ端のため何故こんなことになったのか、船の任務が何だったのかすらわか...

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自作小説倶楽部6月投稿

『手紙』
 拝啓 城崎由梨乃様
お久しぶりです。お元気ですか。
ああ、いけない。差出人の名前を見ても私が誰だかわかりませんよね。R高等学校でほんの少しの間、貴女のピアノを聞いて言葉を交わした下級生です。あの頃、貴女への憧憬で胸がいっぱいでちゃんと自己紹介をした記憶すら無いのです。いまでは不...

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自作小説倶楽部5月投稿

「田植えの風景」

立夏も過ぎ、黄金週間も明けると有給も使って一週間の休みを取った。職場の先輩に「が以外旅行に行くの?」と聞かれたので「祖父の棚田で田植えです」と正直に答えると呆れた顔をされた。お休みは旅行の方が普通なのだろうかと思いつつ帰郷したが、久しぶりに昔なじみの顔を見ると些細な悩みなんて...

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自作小説倶楽部4月投稿

『越えてきたもの』

終わらない。終わらない。
俺はつぶやいたそれがもう声になっているかもわからない。
俺は白い山を登ろうとするが足元の書類は見る間に崩れ落ちて上ることが出来ない。いくつもの山を越えてきたというのに山はどこまで続いているのかわからない。
「ヤッホーーーー」
必死の俺の耳に呑気な声...

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自作小説倶楽部3月投稿

『私が死んだ日』


「私が死んだ日のことを教えてください」
ウェイトレスが立ち去るのを待って、そう言った少女はあの日と同じ姿をしていた。紺のセーラー服に長い三つ編み、後ろで1つに編んだ髪を右肩に垂らすところまで記憶の通りだ。胸には〈西野〉という小さなプレートが付いている。
「その前に君は彼女の...

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