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ごま塩ニシン


おすがり地蔵尊秘話(20)

 静次のひき逃げ事件は目撃証言や防犯カメラの確認ができていた。偶発的に発生した事件と思い、私は静次の通夜に臨んだ。当然、妻の秀子も来ていた。参列者の多くは静次の妻の姻戚関係の人が多かった。私自身、通夜に顔出しした人のほとんどと面識がなかった。というのも静次は学生結婚をして、正式な結婚式を挙げていなか...

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おすがり地蔵尊秘話(19)

 2種間ほどが、あっという間に過ぎ去った。だが、小説の方は、書き始めてはポイ捨ての状況で思い通りに進捗しなかった。夜遅くなっても、寝られないので久しぶりにラジを聞くことにした。音楽番組の後にニュースが流れてきた。闇金のアジトが警察の一斉捜査で摘発されたという内容であった。
 私は義弟の古川静次のこと...

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おすがり地蔵尊秘話(18)

 古川静次はドイツ製の車に乗って来た。若い頃からの静次の愛車だが、私は気に入らなかった。儲けているのならいいが、経営の苦しい時に、こうした個人趣味は何か空疎に思えてならない。「口うるさいようだが、車以外の乗り物にして身を引き締めた方がいいな。」 私は正直に言った。静次が渋い顔をした。が、素直にこう言...

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おすがり地蔵尊秘話(17)

 妻の弱気な態度に接すると、何か形勢が逆転してきたような気持になった。あれだけ、私を毒殺つもりなのかと、大きな声で反発していた秀子の様子が変わってきたことが愉快であった。そもそも、俺は気の弱いところがいけないのだと思った。どーんと大きく構えて、自分の我欲を貫く方が、人生を上手に渡れるのではないか。あ...

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おすがり地蔵尊秘話(16)

 離れを借りるというより、私は大学時代の下宿生活を思い出していた。正直に言えば、離婚を前提にした別居という考えではなかった。甘い考えではあったが、あまり先のことまで考えても、仕方がないというか、どこかオポチュニスト的な性格から抜けきっていなかった。いつも出たとこ勝負で生活してきた。ただし、寝る布団は...

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