きっと、これは、夢なのだ。
悪い悪い夢。
早く目を覚まさなくちゃ。
少女は後ろを振り向かずに、森の濃い霧の中を歩きだした。
それで正解。
霧が隠した、感情任せで起こしてしまった大きな罪は、少女の記憶からすっぽりと抜け落ちてしまっていたから。
今見たら、彼女は狂ってしま...
日日是悪日
きっと、これは、夢なのだ。
悪い悪い夢。
早く目を覚まさなくちゃ。
少女は後ろを振り向かずに、森の濃い霧の中を歩きだした。
それで正解。
霧が隠した、感情任せで起こしてしまった大きな罪は、少女の記憶からすっぽりと抜け落ちてしまっていたから。
今見たら、彼女は狂ってしま...
黒光りするそれを、強く握りしめる。
それはいつもよりも重く感じ、掌と私の心に小さな重圧をかけた。
今日、私は、一つの命を奪いにいく。
別にそれに後ろめたさはない。
殺しは何度も行ってきた。幾度も幾度も、飽きることなく。
そうしているうちに、殺人という行為に何の感情も持たなくなった。...
「愛って何なんだろうね」
初夏の日差しがさんさんと降り注ぐ午後の川の土手。
短い丈の草の上に大の字に寝転がり、僕は恋人の、紗帆に聞いた。
紗帆も僕と同じように、手足を大きく伸ばしている。
「愛?」
「愛」
腕を瞼の上に乗せ、太陽を直接見ないようにしている紗帆。
それくらい、...
「見ないで」
彼女は懇願した。
床にうずくまり、緑色した綺麗な眼から涙をこぼしながら。
「見ないで、見ないで!」
彼女は頭を激しく揺らした。
肩までかかるほどの、銀色の髪も一緒に揺れる。
「私は醜い塊だから。これ以上見ないで。近づかないで!」
最後のほうは最早ヒステ...