Nicotto Town


ごま塩ニシン


夜霧の巷(7)

 菅原は、後ろの席にいる二人の男の会話を偶然、耳にした。
「スゲーな。ヒットしたな。これ金になるのと違う。」
 キーの高い男の声であった。
「もーちょっと、数字が伸びたら、いいんだがな。」
 最初は興味が湧かなかったが、菅原は閃きを感じた。話題になっている橋の上から人物が消えたというユーチューブのこ...

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夜霧の巷(6)

 事態は、翌日、思わぬ展開を見せた。ユーチューブに投稿された映像に閲覧者の注目が集まったのだ。それは雨の中、橋を渡ろうとしていた人物が、すれ違った車の通過後に橋から姿を消してしまうという映像であった。一種のトリック映像のように思われたが、もし、本当であれば車が通過する際、橋の上の人物が何らかの影響を...

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夜霧の巷(5)

「この人物の名前はご存知ですか。」
 刑事の質問の場合、一方が話している時には、もう一人の男は必ず相手の表情を観察している。微妙な変化を読み取ろうとしている。
「信太盛太郎さんです。古くからのお客さんですので。昨日は開店と同時に見えられて、夕方の6時過ぎでしたわ。この方は、来られるときは店の開店する...

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夜霧の巷(4)

 夜霧の中へ帰っていった信太盛太郎がテレビニュースで報道されていた溺死人物なのかどうか、美佐は判断に迷っていた。可能性があるかもしれないという不安もあるが、最悪のケースは想定したくなかった。結局、雪枝に余計な心配をかけることになっても、よくないので不確定なことを話題にするべきではないと、美佐は結論付...

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夜霧の巷(3)

 病室に、そっと入ると雪枝は窓に向かって立っていた。高台にある港総合病院からの見晴らしはよかった。港町の風景を見ているだけで気分転換になった。岸壁に係留されている外国籍の貨物船が荷揚げ作業をしていたが、人の姿が昆虫のように小さく見えた。
「起きていて、大丈夫なのですか。」
「痛み止めが効いているのか...

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