Nicotto Town


河井継之助


ゆめ

薄明の短いまどろみのなかで
白い花のゆめをみた
ささやかな庭いっぱいに咲く
白い薔薇のゆめ


さらさらとふくやさしい風に
花弁をかすかにゆらし
おおきくひらいた白いばら


すきとおるあわい日差しに
しずかな笑みをたたえ
ちいさくよりそう白いばら


わたしはここにいるよ
わたしはまけないよ


...

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さくら

さりげなくこぼれてゆく
とおい日にあこがれた
はなびらのひとつ

たえまない川のほとり
もどかしさにゆれてただよう
はなびらのわかいいろ









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椿

雪の朝であったなら
紅の色にも燃え得たものを
風のふくままに
夕闇の林道へと落ちてゆく


青春の初めの日
ぼくが手にふれたものは
まことの姿をもたない
かげろうばかりであったのか


遠ざかれば捨ててしまおう
頼りない絆のように
近づけば指の間からこぼれてゆく


うたびとの嘆きでもないけれど
影...

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しんしんと更けてゆく冬
荒涼の月の影ばかりが遠い






















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キャスター・マイルド

もう煙草を喫ってしまおうとおまえはいった。
なにもかも終わりにしたいのだと。
そうして白い紙巻のいっぽんに火をつけた。

                *

      深夜の橋では
      鳩の骸に風花が落ちている
              
                *

なんにも...

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