雨の降る遠い町で――虚蝉に
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/11 08:18:33
はるかな町に 雨がしづかに降つてゐる
瓦のやうに灰色の 見知らぬ屋根たちの下
僕はひとりで 古い窓から外を眺め
おまへののこした うすい殻を手のひらに載せてゐるあの夏の日 光のなかで啼きしきつたおまへの
小さなうたは いまはどこへ行つてしまつたか
この濡れた舗石(しきいし)のうえを 流れる水のやうに...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
はるかな町に 雨がしづかに降つてゐる
瓦のやうに灰色の 見知らぬ屋根たちの下
僕はひとりで 古い窓から外を眺め
おまへののこした うすい殻を手のひらに載せてゐるあの夏の日 光のなかで啼きしきつたおまへの
小さなうたは いまはどこへ行つてしまつたか
この濡れた舗石(しきいし)のうえを 流れる水のやうに...
青い小さなともしびが
ひっそりと 野原のすみにともる。
それは、あなたがのこしていった
わすれな草の、かなしい瞳。風はわたしたちのあいだを通り、
かすかな記憶のにおいをはこぶ。
光のなかにとけてゆく日々を、
わたしはただ、じっとみつめていた。あつい夏の日の ひるさがりに、
あなたは遠い雲の峰をゆびさ...
あかるい雲が 青い山脈のうえに湧きあがり
林のなかの径は 木漏れ日の斑(まだら)に濡れてゐる
風はどこかで 小さなオルゴールを鳴らすやうに
乾いたひかりの葉を ひそかに揺らしてゐるのだったあすこの地平に 揺らめく水のまぼろし
それは僕が いつか置き忘れてきた日々のやうに
ひとつの歌が 熱い大気に燃え...
草のうえには あかるい真昼のしづけさが満ち
だれもゐない径(みち)を 光だけが歩いてゐる
風はどこかで 微睡(まどろ)む梢にわすれられ
青い空のすそを ひそかに揺らしてゐるのだったあすこに見えるのは 揺らめく水のまぼろし
ゆきすぎる季節の うすいリボンのやうに
ひとつの名前が 白く燃えつきては
かす...
他人に背を向け、アスファルトに孤影を這わせて歩く。
だが、一歩進むたびに、その灰が風に舞うように胸の内で暴れ、
シワの寄ったシャツの向こう側で、俺の呼吸をじわじわと熱くする。
だが、俺の足が止まることはない。
この程度の煙たさで、ヤワな生き方は、とうに捨ててきたからだ。
歩き続けることだけが、俺の唯...
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