そっと窓をひらけば 夜のしずく
雨のなかに 青い月光がとけてゆく
セーヌの川面は 銀色にかがやきながら
僕のなくした時間を どこへ運んでゆくのだろうポン・ヌフのアーチのした あわく揺れる影
きみのさしかける傘の うつくしい丸みのなかで
僕はただ やさしいソナタを聴くように
言葉にならない旋律を 胸に...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
そっと窓をひらけば 夜のしずく
雨のなかに 青い月光がとけてゆく
セーヌの川面は 銀色にかがやきながら
僕のなくした時間を どこへ運んでゆくのだろうポン・ヌフのアーチのした あわく揺れる影
きみのさしかける傘の うつくしい丸みのなかで
僕はただ やさしいソナタを聴くように
言葉にならない旋律を 胸に...
昏い雨に濡れた アスファルトの底から
にじみだすのは 濁ったアブサンの緑色か
アトリエのストーブは とうに冷えきって
僕はただ 他人の燃え殻のような夜を生きているジャンヌ きみの引きのばされた首のうつくしさが
僕のキャンバスを いまも呪縛のように縛りつける
モディリアーニが その瞳を塗りつぶしたとき...
淡い夕暮れが 石畳を濡らすころ
かすかな風は 古いマロニエをゆらし
僕の窓を そっと叩きにやってくる
遠い 遠い モンパルナスの街角からきみの指先が奏でていた やさしいソナタは
いつしか雲のむこうの 星のまたたきにまぎれ
僕はただ ひとつの部屋のともしびを見つめ
過ぎ去った季節の影を ノートに書きつ...
古ぼけた書物のページをめくるように
夕日はひそかに 坂道を染めてゆく
カルチェラタンの 騒がしいざわめきも
いまは薄紅色の もやのなかに沈んで学生たちの議論の声は 遠ざかり
僕はひとり 煉瓦の影にたたずむ
ポケットのなかで ちいさく硬貨を鳴らし
見知らぬだれかの 幸福を祈ってみるセーヌを渡る風は つ...
木炭のこなの あわく舞う部屋に
ひとすじの光が 古い画架(イーゼル)を照らし
僕はただ 見知らぬモデルの輪郭を
白い素描紙のなかに そっと閉じ込めようとするここには かつて夢を追った異邦人たちの
かすかな吐息が いまでも壁に眠っている
きみが削っていた パステルのやわらかな青が
僕の指先を いつまで...
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