想いでカルチェラタンの夕日
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/12 20:55:06
古ぼけた書物のページをめくるように
夕日はひそかに 坂道を染めてゆく
カルチェラタンの 騒がしいざわめきも
いまは薄紅色の もやのなかに沈んで学生たちの議論の声は 遠ざかり
僕はひとり 煉瓦の影にたたずむ
ポケットのなかで ちいさく硬貨を鳴らし
見知らぬだれかの 幸福を祈ってみるセーヌを渡る風は つ...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
古ぼけた書物のページをめくるように
夕日はひそかに 坂道を染めてゆく
カルチェラタンの 騒がしいざわめきも
いまは薄紅色の もやのなかに沈んで学生たちの議論の声は 遠ざかり
僕はひとり 煉瓦の影にたたずむ
ポケットのなかで ちいさく硬貨を鳴らし
見知らぬだれかの 幸福を祈ってみるセーヌを渡る風は つ...
木炭のこなの あわく舞う部屋に
ひとすじの光が 古い画架(イーゼル)を照らし
僕はただ 見知らぬモデルの輪郭を
白い素描紙のなかに そっと閉じ込めようとするここには かつて夢を追った異邦人たちの
かすかな吐息が いまでも壁に眠っている
きみが削っていた パステルのやわらかな青が
僕の指先を いつまで...
白いサクレ・クールを あわく濡らして
朝のひかりが 石段をのぼってゆく
僕の帽子を ふいにさらおうとするのは
あのなつかしい モンマルトルの丘の風風は むかし僕たちが口ずさんだ
名もない歌の リフレインを運んでくる
画架を並べた テルトル広場の片隅で
きみが笑っていた あの夏の日のはかなさ見下ろせば...
青いカンヴァスに、一本の白い線。
灼熱の硝子(がらす)のなかに、
ぼくらの灯台は突っ立ってゐる。
逆光のなかの、鋭い沈黙。波は、くだける貝殻のひびき。
光のつぶてに追はれながら、
海鳥たちは、ひくく、また、たかく、
失はれた歌の一行(いちぎょう)をなぞる。風はどこから吹いてくるのか。
ただ、まぶしす...
灼熱の光は、ぼくらを刺す刃(やいば)。
淡い薄瑠璃(うするり)の空を、ひき裂くやうに、
白い灯台は、ただ、突っ立ってゐる。
逆光のなかに、君を置き去りにしたまま。風は吹きつのり、砂を噛む。
それは、ちぎれた幸福の吐息(といき)。
海鳥たちは、パステルをこぼした波の上、
狂ったやうに、君の名を呼びつづ...