封印された遺書(6)
- カテゴリ: 小説/詩
- 2017/12/14 17:17:05
君岡は、弟が家の権利の半分を現金で欲しいと要求してきた経緯を北野に詳しく説明をした。
「君の家の資産評価額がいくらになるか、分からないが、いずれにしても話し合って解決するしかないだろう。喧嘩したって、どうしようもないから。」
「どんな方法があるの。」
「普通は、弟さんが相続放棄をして、相続相当分の...
君岡は、弟が家の権利の半分を現金で欲しいと要求してきた経緯を北野に詳しく説明をした。
「君の家の資産評価額がいくらになるか、分からないが、いずれにしても話し合って解決するしかないだろう。喧嘩したって、どうしようもないから。」
「どんな方法があるの。」
「普通は、弟さんが相続放棄をして、相続相当分の...
営業から会社に戻ると、北野さんから(パンフレットがなくなったという連絡が入りました)というメモ書きが置いてあった。いい機会であった。古屋弁護士に相談する前に弟の宗則の件で、北野の意見も聞いておきたいと君岡は感じた。早速、パンフレットをワゴンに詰めるとパークショップ『よろず生活館』へ向かった。北野の...
悪い予感は当たるものである。1か月後、弟の宗則から母親宛に電話が入った。父の死後、家の名義は君岡と弟の宗則の連名になっていた。母親は権利放棄していた。従って、宗則は生まれた家の権利を二分の一だけ持っていた。宗則にしてみたら、自分の持ち分を現金で貰いたいと思っていて当然である。 母は宗則がやっている...
君岡は北野の行為に甘え、「君のところの旅行のパンフレットがなくなったよ。」と連絡を受けると、電車に乗ってパンフレットを届けた。北野と会うたびに昼食をしながら、政治のことや経済情勢のことで雑談をするのが楽しみであった。
「今日はね。午後の3時から顧問の古屋弁護士が来てくれて、無料の法律相談をすること...
1年後、パークショップで『よろず生活館』を開設しましたと挨拶状が北野から届いた。北野が住んでいる南海沿線の団地で中央広場にある公園にパークショップが新設され、この一角に小さな事務所を開設したというのであった。挨拶状には手書きの追記が添えてあった。北野は司法書士の資格を取得したが、2年後輩の古屋氏が...
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