想いで パリ裏街のノアール
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/12 20:59:57
昏い雨に濡れた アスファルトの底から
にじみだすのは 濁ったアブサンの緑色か
アトリエのストーブは とうに冷えきって
僕はただ 他人の燃え殻のような夜を生きているジャンヌ きみの引きのばされた首のうつくしさが
僕のキャンバスを いまも呪縛のように縛りつける
モディリアーニが その瞳を塗りつぶしたとき...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
昏い雨に濡れた アスファルトの底から
にじみだすのは 濁ったアブサンの緑色か
アトリエのストーブは とうに冷えきって
僕はただ 他人の燃え殻のような夜を生きているジャンヌ きみの引きのばされた首のうつくしさが
僕のキャンバスを いまも呪縛のように縛りつける
モディリアーニが その瞳を塗りつぶしたとき...
淡い夕暮れが 石畳を濡らすころ
かすかな風は 古いマロニエをゆらし
僕の窓を そっと叩きにやってくる
遠い 遠い モンパルナスの街角からきみの指先が奏でていた やさしいソナタは
いつしか雲のむこうの 星のまたたきにまぎれ
僕はただ ひとつの部屋のともしびを見つめ
過ぎ去った季節の影を ノートに書きつ...
古ぼけた書物のページをめくるように
夕日はひそかに 坂道を染めてゆく
カルチェラタンの 騒がしいざわめきも
いまは薄紅色の もやのなかに沈んで学生たちの議論の声は 遠ざかり
僕はひとり 煉瓦の影にたたずむ
ポケットのなかで ちいさく硬貨を鳴らし
見知らぬだれかの 幸福を祈ってみるセーヌを渡る風は つ...
木炭のこなの あわく舞う部屋に
ひとすじの光が 古い画架(イーゼル)を照らし
僕はただ 見知らぬモデルの輪郭を
白い素描紙のなかに そっと閉じ込めようとするここには かつて夢を追った異邦人たちの
かすかな吐息が いまでも壁に眠っている
きみが削っていた パステルのやわらかな青が
僕の指先を いつまで...
白いサクレ・クールを あわく濡らして
朝のひかりが 石段をのぼってゆく
僕の帽子を ふいにさらおうとするのは
あのなつかしい モンマルトルの丘の風風は むかし僕たちが口ずさんだ
名もない歌の リフレインを運んでくる
画架を並べた テルトル広場の片隅で
きみが笑っていた あの夏の日のはかなさ見下ろせば...