木々の葉むらはみどりのさやさやと
吹きすぎる風はあたらしくつめたく
雲の影は谷間をわたってゆき
ひそかにひとりのかなしみを告げるある山頂の森の、苔むした湯壺には
なつかしい日々の記憶が沈んでいる
古びた木の扉はひそやかに閉ざされ
だれも訪れぬままに時はながれるけれど夏もなほ、ここには涼しいかげり
水...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
木々の葉むらはみどりのさやさやと
吹きすぎる風はあたらしくつめたく
雲の影は谷間をわたってゆき
ひそかにひとりのかなしみを告げるある山頂の森の、苔むした湯壺には
なつかしい日々の記憶が沈んでいる
古びた木の扉はひそやかに閉ざされ
だれも訪れぬままに時はながれるけれど夏もなほ、ここには涼しいかげり
水...
せは(わ)しいひと波がゆき交ふ 都会の駅のホーム
ひるさがりの乾いた光が 硝子(ガラス)の天井からこぼれ
ぼくはひとり 古びたトランクを足もとに置いて
錆びついた鉄路の はるかなつづきを見つめてゐるポケットのなかの 小さな小さなオルゴール
ぜんまいを巻けば あおい高原の風のやうに
あの夏の日のしらべ...
み上げる夜空のすきまから こぼれる星屑(ほしくず)
高原のしじまを あおい光の粉(こ)が満たしてゆく
ぼくの肩にふれる つめたい夜の風は
いつかおまへと 分けあった季節の匂いがする「またいつか、この場所で」と かわした約束
それはもう 言葉の形をしてゐないけれど
天の川のひそやかな きらめきのなかに...
あおい木蔭のテーブルに ひろげた便箋(びんせん)
夏のひかりが しらかばの葉をまぶしく揺らし
ぼくの万年筆のさきに ひとつの名前を
書かうとしては また風がさらってゆくおまへに宛てた手紙は いつも途中で途切れる
あまりに透きとおつた この高原のひるさがりに
ぼくのさびしさを語る ことば(言葉)が見つ...
しらかばの葉のすきまから こぼれる光
朝の霧は まだ浅いみどりの草を濡らし
ぼくが歩けば かすかな足おとのうしろから
冷たい風が 追いついては通りすぎてゆくおまへと歩いた あの遠い夏の日のやうに
高原のすずらん(鈴蘭)が ひそかにひらいてゐる
その白い花びらの 小さなかたち(輪郭)のなかに
ぼくは失...