もうひとつの夏へ 【5】
- カテゴリ: アルバイト
- 2011/08/29 00:37:23
2人は宙に舞った。
そして雪美を抱きかかえるようにして、左肩から地面に叩きつけられた。
衝撃を防ごうと、手を後ろへ伸ばそうとも考えたが
結局雪美の保護を優先してしまった。
「痛ぅ…」
激痛のあまり、のたうちまわり仰向けに転がった。
(もしかしたら、ヒビくらいは入ったかもな)...
2人は宙に舞った。
そして雪美を抱きかかえるようにして、左肩から地面に叩きつけられた。
衝撃を防ごうと、手を後ろへ伸ばそうとも考えたが
結局雪美の保護を優先してしまった。
「痛ぅ…」
激痛のあまり、のたうちまわり仰向けに転がった。
(もしかしたら、ヒビくらいは入ったかもな)...
8月31日だというのに、駅はやけに混んでいた。
(あの時、こんなに混んでいたっけ?)
8年前を思い出そうとしたが、まったく思い出すことは出来なかった。
淡い光が構内を照らし、行き交う人を照らしている。
壁には、いくつもの広告が埋め込まれていて、その中から女優が微笑みかけていた。
(この女優...
受付には黒髪の女性の姿はなく、別の女性がいた。
栗色の短い髪、人当たりの良さそうな顔、一般的基準なら十分美人の範疇だ。
服装も振袖などではなくスーツを着ていた。
(これが普通だよな)
心の中でクスリと笑ってしまった。
「何かお困りですか?」
女性はにこやかに対応した。
「あの~00号室...
斎場に着くまでは、ひどいどしゃぶりだったが着いた途端太陽が顔を見せていた。
雪美の母親を見つけ、会釈をする。
傍に父親の姿はない。
きっと離婚したのだろう。
受付を済ますと黒いドレスの優に会えた。
いっぱしの美人になっていた。
「見違えたな」
「そう?」
立ったまま一言二言交わすと、...
その日は朝からやけに蝉がうるさかった。
今思えばあれが虫の知らせって奴だったのかも知れない。
毎晩の暑さにうなされ、今夜もようやくうとうとし掛けた時に、不意に電話が鳴った。
「こんな時間になんだよ ん? 見たことのない番号だな」
ディスプレイに表示された数字の羅列に覚えはなかった。
普段...
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