「たしかに、子は父のものだ。しかし、父が子をぶつと、子は母の離れに行って慰めを求める。万事順調、素晴らしい人生なら、子は父の故郷のもの。しかし、悲しみと苦しみがあれば、母の故郷に庇護を求める。母はここでお前を守ってくれる。この地で母は眠っておる。だからわしらは、母は至高なりと言うのだ。オコンクウォよ...
愛と平和を
「たしかに、子は父のものだ。しかし、父が子をぶつと、子は母の離れに行って慰めを求める。万事順調、素晴らしい人生なら、子は父の故郷のもの。しかし、悲しみと苦しみがあれば、母の故郷に庇護を求める。母はここでお前を守ってくれる。この地で母は眠っておる。だからわしらは、母は至高なりと言うのだ。オコンクウォよ...
「リズ、気分が悪いよ」
「ほんとに、しょうがないわね!」
エリザベートは立ちあがったが、脚がしびれて、びっこを引いた。
「どうしてほしいの?」
「どうしてって……ぼくのそばにいてほしいんだ、ベッドのそばに」
ポールの目から涙があふれた。
幼い子供のように、唇をとが...
願望の文型の解説をしているときだが、ふと思いついた。
私は訊ねた、「みなさんは、来世何に生まれ変わりたいですか?」
むろん、本来初級語彙ではありえない「来世」ならびに「生まれ変わります」を導入する必要はあったが、ほぼ全員が同様の返答をしたのには驚きを禁じ得なかった。
いわく、「母の...
「フラニー、きみに言うことが一つあるんだ。ぼくが本当に知ってることだ。逆上したりしちゃだめだぜ。べつに悪いことじゃないんだから。きみがもし信仰の生活を送りたいのならだな、きみは現にこの家で行われている宗教的な行為を、一つ残らず見すごしていることに今すぐ気づかなければだめだ。人が神に捧げられた一杯のチ...
夫に背負われて林をでた。
広い背中からミコへ、少しずつ温もりを分け与えながら正太郎が坂道を上り始める。
坂を上りきったところで、つと正太郎が立ち止まった。
「ミコ、あんなところでお前、なにしてた」
静かな問いだった。
「星——」
「星がどうかしたか」
「星を...