Nicotto Town



「泣きそうになったが、泣かなかった話」

鬼滅の刃の映画を観た。
物語の後半、胸を刺すような場面が続いて、気づけば呼吸が浅くなっていた。
こういうとき、昔なら素直に涙も出ただろうと思う。
だが今はもう、そう簡単には泣けない。
年を重ねると、涙もどこかに引っかかって、うまく流れない。 隣の席には、小学生の女の子。
最初は静かに観てい...

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独りは骨の内側で起こる

夜になると、骨が鳴る。
誰にも触れられてないのに、
内側で擦れて、軋む。 寂しさは皮膚じゃなく、
たぶん、胃の奥に棲んでる。
何を食べても、満ちないのはそのせい。 誰かの声が恋しいのではなくて、
自分の声が聞こえないことが怖いだけ。
静かすぎて、心臓の音がうるさい。 独りは、
神経の先...

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緑の底で息をやめる

白い喉が、
まるで刃物のように、夜の静けさを裂いていた。 その一瞬、時間は止まり、
世界の中心がふたりの皮膚の接点へと、ぎゅっと縮んだ。 布の下で、汗ばむ肉がわずかに震える。
それは羞恥ではなく、悦びでもなく、
ただ、意識が肉体に屈服する音だった。 指先は、ふれるのではない。
侵入するでも...

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《雨はまだ降っている》

雨粒のひとつひとつが
彼女の名前を知っているような気がした。傘をさしていても
頬は濡れる。
それが涙かどうか、わからないままで。部屋に戻ると
椅子がひとつ足りない。
カップは二つあるのに、
テーブルが広すぎる。光がカーテン越しに差し込んで
彼女の不在だけを照らしている。私はその場所を
...

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「封を叩く音」

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