恋の予感がしたと思ったら
池だった。
完全に池だった。 赤くて、でかくて、
優雅に泳いでて、
目が合った気がしたけど
それ、鯉。 ドキッとした心拍数、
バクバクした胸、
全部パンくず見た時の反応。
恋じゃない、給餌タイム。 近づけば近づくほど
向こうも寄ってきて、
「これは両想い...
恋の予感がしたと思ったら
池だった。
完全に池だった。 赤くて、でかくて、
優雅に泳いでて、
目が合った気がしたけど
それ、鯉。 ドキッとした心拍数、
バクバクした胸、
全部パンくず見た時の反応。
恋じゃない、給餌タイム。 近づけば近づくほど
向こうも寄ってきて、
「これは両想い...
恋の予感がした。
――と思ったらただの腹の虫だった。
グルルル…って、あれ恋ちゃうんかい。 道端の風がそよいで
「運命か?」って振り返ったら、
ビニール袋がワルツ踊ってただけ。 スマホの通知が光って
「もしやあの人?」って胸が高鳴ったのに、
メルカリから“あなた...
眠りにつく前の吐息は、
庭の風鈴がふれる音のように頼りなく、
その体は季節の隅に落ちた
古いマフラーみたいに軽かった。 私の掌はただ、
沈みゆく小舟を支える櫂のように
そばにあることしかできない。 目を閉じた猫の胸の奥で、
遠くへ帰る鳥の影が
そっと揺れている気がした。 やがて静けさが...
初冬の金色は、いつからこんなにも胸に沁みる色になったのだろう。
彼女と歩いた放課後の並木道も、今では思い出の中で薄く光っている。 風がふれるたび、彼女の笑い声や、言えなかった言葉がふっと舞い上がる。
あの頃は未来が無限に続くと思っていたのに、いま振り返れば、あの金色の季節ほど儚いものはなかった。...
あなたとの距離は底辺、
指先は高さ。
わずかな角度の変化で、
私の内側の面積は静かに熱を帯びる。
触れた点で蕾は弾み、
果実はまだ熟さぬまま滴を滲ませ、
面積の増加はまるで
理性を押し広げる快楽の公式のように、
全身を占める。