その一はるに近い あかるい夏日の夕暮れ
なみは 無数の宝石のやうにひかる
けれど まぶしすぎる光の海のうえに
黒い夜の影が そつと忍びよるゆくえを忘れた鳥が 一羽だけ
きらめきを失ふ波のまにまに 消えてゆく
さびしい心は なにもいはずに
ただ 色をうしなふ水のゆくすえを追ふそこへ ひと声の汽笛がひび...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
その一はるに近い あかるい夏日の夕暮れ
なみは 無数の宝石のやうにひかる
けれど まぶしすぎる光の海のうえに
黒い夜の影が そつと忍びよるゆくえを忘れた鳥が 一羽だけ
きらめきを失ふ波のまにまに 消えてゆく
さびしい心は なにもいはずに
ただ 色をうしなふ水のゆくすえを追ふそこへ ひと声の汽笛がひび...
I. 蛍の丘
雲はちぎれて空はみづいろに澄み
丘の小径をふりかへり見れば
草の葉末にちひさな火屋(ほや)がともる
風はなやかに木々の梢をゆするいつか失はれたあの日の約束が
もいちどめぐりくる季節のなかで
おもひでのやうに野辺をただよふ
かなしみを忘れたやうにまたたくああ それは過ぎし日の夢のあかし
...
静まり返った部屋_
鳥籠のなかの小さな羽ばたき。
レコードの溝を滑る針が、
あの物憂げなオルガンの音を、ぽつり、ぽつりと落としてゆく。
中折れ帽の庇を引き下げれば、
世界はただ、冷たい青の一色に染まる。トレンチコートの襟に顔を埋め、
寂れた路地裏の、濡れた石畳を歩いてゆく。
消えかけたネオン、遠くで...
冷たい雨が窓を叩く、青い影だけが息づく部屋。
レコードの溝に針が落ち、あの懐かしいオルガンの旋律が滑り出す。
軽やかで、どこか胸を締めつける、哀愁を帯びたリフレイン。
それは、感情を削ぎ落として生きる俺の、たったひとつの逃げ場所だった。トレンチコートのポケットに両手を深くねじ込み、
煙草の煙の向こう...
錆びた錨が、引き潮の底で骸骨のように横たわっている。
夜霧が、波止場のちぎれたロープを白く濡らしていく。耳を澄ませば、海の底から響くのだ。
あの「エターの歌」が。それは、かつてこの港を支配した冷たい幻影。
消え去ったはずの、古い神の囁き。 エターの歌
満ちる潮は 鉛の味
乾く喉に 毒を注げ
夜...