Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



鏡の迷宮

奴はどこか遠くを見つめ、溜息混じりに「自分」を語る。
本当の居場所はここじゃない、まだ見ぬ何かが眠っているはずだ、と。
使い古された台詞を、まるで啓示でも受けたかのように繰り返す。旅に出れば、職を変えれば、あるいは誰かと出会えば。
新しいパズルの一片が見つかると信じて、奴は今日も「ここではないどこか...

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借り物の言葉

カウンターの端で、奴がまた「正論」という名の毒を吐いている。
どこかの誰かが書いた本の一節か、
賢い誰かが垂れ流した流行りの理論。
一滴も汗をかかず、傷ひとつ負わずに手に入れた、
安っぽいメッキの盾だ。「合理的じゃない」「リスクが大きすぎる」
奴の舌は滑らかに、人生という戦場を整理整頓していく。
だ...

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5月のストレンジャー:沈黙の断章

五月の雨は、嘘の匂いがする。
アスファルトの熱を奪い、
昨日までの足跡を、丁寧に消していく。俺はコートの襟を立て、
ポケットの中の重みを確かめる。
それは引き金ではなく、
誰にも届かない言葉を書き留めた、古い手帳。「火を貸して」
隣に立った影が、掠れた声で囁いた。
差し出したライターの火が、
一瞬だ...

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5月のストレンジャー

五月の風は、俺のスーツをすり抜けて、
過去の疼きを冷やしていった。
窓の外、濡れたアスファルトが夕陽を吸い込み、
街は静かに、記憶の澱(おり)を吐き出す。煙草の煙、バーボンの琥珀色、
昨日までのすべては、箱に入れて海に沈めた。
この街に、俺の名前を呼ぶ奴はいない。
それがこの薄汚れた場所で、
綺麗に...

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似非の正義2

男が立ち上がり、俺の肩を掴もうとしたその時、奴の懐から一通の封筒が滑り落ちた。湿ったアスファルトの上で、中身が露わになる。それは、奴が先ほどまで「不浄な悪」と断じていた組織の、裏印が入った分厚い札束だった。「これは……違う、これは調査の、その…&hellip...

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