やっとのことで、町中を抜け出し、加茂川を渡った。その東側には、いくつもの寺院があったはずだが、その光景が一変していることに気付かされる。よく戦乱時には、寺院を攻めて焼け落とす、と言われる。昨夜も、これらの寺院が、町中から少し離れているとはいえ、西側か東側かわからぬが、同じような被害を加えた模様である...
やっとのことで、町中を抜け出し、加茂川を渡った。その東側には、いくつもの寺院があったはずだが、その光景が一変していることに気付かされる。よく戦乱時には、寺院を攻めて焼け落とす、と言われる。昨夜も、これらの寺院が、町中から少し離れているとはいえ、西側か東側かわからぬが、同じような被害を加えた模様である...
その縦笛の音色は、少年が奏でているとは思えぬほどに、繊細で奥行きのある響きであった。その旋律に合わせて、草も花も樹木も虹も人も、心を和ませ踊りだす。その調べは、あたりの空気に溶け込み、朗々と響き渡った。常和の縦笛には、万物の心を和ませ、生まれたままの姿を思い起こさせる、不思議な力があった。
その力が...
そこには、鍋の中の味噌の香りと、囲炉裏に差し込まれた川魚の串刺しの焼ける匂いがほんのりと漂い、どこか郷愁を誘われる、雰囲気に満ちていた。
常和は、「お邪魔します」と、挨拶しながら居間に入った。
二人は、笑顔で常和を迎い入れ、囲炉裏の席に座るように促す。みつは、グツグツと音を立てて煮えている汁を...
私は、二年間の暖かく深い愛に、感謝の気持を述べた。勿論、ユージンが通訳してくれた。しかし、彼がいかに私の気持ちを汲み取って表現してくれたにしても、心底の気持ちは伝わっていないのではないか、という無念さが残る。それは、ユージンに対してもある。何故なら、自分自身に、感謝の気持を全てし尽くしたかと問えば、...
続いて発生した台風に、行く手をはまばれたばかりでなく、高波にさらわれて、船は無惨にも転覆してしまう。乗船していたほとんどの人たちは、助けを求める叫び声を発しながら、船もろとも海の底に沈んでいった。私を加えた五人が、海に投げ出されたが、とっさに流木にしがみつき、大きな波のうねりの中を、流されていった。...